玖隆あきらくんは、トレジャーハンターのお仕事をしています。
トレジャーハンターというのは、超古代の遺跡を探検して、宝物を探し出すお仕事です。
「ふう」
男の子の割にはあまり身長の高くないあきらくんは、かぶっていたゴーグルを脱いで、おでこの汗を拭いました。
やわらかそうなくり色の髪の毛に、キラキラ光る瞳の色は暗い所ではみどり色に見えます。
明るい場所では赤色です。
今、あきらくんは超古代遺跡の一つ、天香学園高校という場所の地下にある、天香遺跡という場所を調査している真っ最中です。
「うん?」
頭の上をみると、天井は高すぎて見えません。
辺りの景色は石ばかりです。
くろづかくんあたりが喜びそうな空間です。
くろづかくんというのは、あきらくんのお友達で、石が大好きなのです。
「今、なにか聞こえたような気がしたんだけど」
あきらくんはきょろきょろとまわりを見回しました。
けれど、どこに、何も、動くものは見つけられません。
(気のせいかな?)
白くて細い首をちょっとだけ傾げて、あきらくんはまた歩き出そうとしました。
その時でした。
すぽーん!
と、狭い場所から小さな何かが抜け出してくるような音と一緒に。
「うわあ!」
石の壁の隙間から、いきなり何か飛び出しました。
それは、勢いよくあきらくんの頭の上を飛びこえて、二メートルくらい離れた場所にぺたりとおっこちました。
あきらくんはしばらく呆気に取られて立ち尽くしていましたが、そろりそろりと近づいて、その何かを調べにいきました。
見下ろすと、それは、生き物のようでした。
ラベンダー色のフワフワとした体毛はビロードのように艶やかでもあり、全体の大きさは15センチほど、ぐったりしているのは落下したショックで気絶しているせいでしょうか、両手の先に大きな爪が生えています。
「―――これは、モグラ?」
あきらくんはしゃがみこんで、そっとモグラを掌に乗せました。
やわらかくて温かなその生き物は、微かにラベンダーの香りがします。
鼻を近づけて、くんくんとにおいを嗅いでみて、それからモグラの顔をじいっと見ました。
両目は閉じています。
長く突き出した鼻先にひげがたくさん生えていて、丸っこい姿はとても可愛らしく、この子をこのまま冷たい石畳の上に置いていなくなってしまうのは、とても意地の悪い事のように思えました。
あきらくんは暫らく考えて、溜息をついていました。
「もー」
あんな高い場所から落っこちてきたのだから、もしかしたら見えない怪我があるのかもしれません。
面倒くさいことになってしまいました。
助けても、死んでしまうかもしれない。
そう思っても、やっぱりこの子をこのままにはしていけません。
それは、あきらくんの性分なのです。
「お前、もし助けられなくても、恨まないでよね?」
そう言いながらあきらくんはアサルトベストの下の、制服の胸元にモグラをぽいと放り込みました。
「今日はこれ以上もう無理か、仕方ないなあ」
帰ろう、と呟いて、歩き出します。
予想外の出来事にすっかり予定が狂ってしまいました。
けれど、あきらくんは怒っているというより、心配しているようでした。
胸元にモグラの温もりがほっこりと触れています。
こつ、こつ、こつと、広間に足音が響いていました。
こうして、あきらくんともぐたんは出会ったのでした。
(続くかもしれない)