Our lovely prince

 

「あーちゃんッ」

いきなり八千穂さんに抱きつかれて、あたふたするあたし。

身長差約5センチ。

でもぎゅむーッと腕の中に巻き込まれて、ちょっと!息ができません!

「や、八千穂、さんっ」

ぷはっと顔を出したあたしを、覗き込んで八千穂さんはニコニコしてる。

「あーちゃん、ちっちゃくて、可愛いッ」

―――はあ、どうも。

(この場合、どういう反応をすればいいのかな)

実はあたし、もっと大きくなりたいんだよね。

170なんて贅沢は言わないけれど、せめて165にはなりたい。

半分で手を打ってくれませんか?神様!

そのために、カルシウムとビタミン群を多めに取って、毎日ジャンプだってしてるのにッ

(んまー、ジャンプは仕事柄だけど)

肉体を酷使しすぎると成長が止まるって、ホントかな?

そんな事考えてたら、反対側からぐいってひっぱられた。

何?!

「あ・き・ら・くんッ」

今度こそむにゅっと。

(うっはあ!)

この香り、柔らかさ、これは。

「ふ、双樹さん!」

「ウフフ、アタリよ、あきらくん」

「苦しいよぅッ」

「あら、ごめんなさい」

またまたぷあって顔を上げて、うぬー、今度は身長差8センチ。

にゃぎゃーッ!

(日本人の女の子って、なんでこんなに発育好いわけ?)

軽いあたしへの嫌がらせですか?

こっちはさらしで巻く必要もないくらい、その、もにょもにょなのに。

ちょっとしょんぼりしてると、トコトコ足音がして、下から「どうしたんですの〜」と覗き込まれた。

「あきらさまぁ〜」

「あ、椎名さん」

「リカで結構ですわ、あきらさま」

ニコッとか笑っちゃって、うわ、かーわいいなあ!

あたしもつられて笑ったら、椎名さんはますますニコニコしてくれた。

「よくわからないですけれど、元気になられたのでしたら、良かったですわ」

「うん」

「あきらさまは笑ってるお顔も可愛いですわね」

え?

頬から、耳にかけて、ぽわっと熱くなる。

か、可愛い?

「え、エヘヘ〜」

―――まあ、ここでは男の子ってことになってるけど、これは褒め言葉として素直に受け取っておこう。

「赤くなったあーちゃん、可愛いッ」

八千穂さんがまた抱きついてきた。

「ウフ、あきらくん」

こ、今度は双樹さんも?!

「うわわ」

バランスを崩しかけて、おたおたしていたら、また別の方向から声。

「あきらさん」

「あッ、な、七瀬さん!」

にこり。

本を抱きかかえた、いつものスタイルで、七瀬さんが近づいてくる。

「楽しそうですね、何をなさっているのですか?

そう?

「ええとね」

苦笑いを浮かべるあたし、そんな事、聞かれたって返事に困る。

気付いたら皆に囲まれてて、八千穂さんや双樹さんに抱きつかれてるんだもん。

こっちもわけがわかんないんだよと、答えようとしたら、どさくさにまぎれて椎名さんが前から背中に両手を回して抱きついてくる。

「あきらさまー」

「わあ!」

「―――モテモテですね、あきらさん」

「ちょ、ちょっと、待った!」

モテモテというか、こんなの困るよう!

女の子三人の抱きつき攻撃で、息苦しいやら何やら、もうメチャクチャです!

はわーってなってたら、七瀬さんが近づいてきて、暫くあたしを覗き込んで、頭をイイコイイコって数回撫でられた。

「あきらさん」

「な、七瀬さんッ」

助けてッ

「―――可愛い」

「へ?」

「うふッ」

そのまま、じーっと見詰められて、ひょっとしてこれって観察されてる?

(うわあん!)

最後の希望を絶たれたあたしに、あーちゃーん!の呼び声が聞こえてきた。

これは、まさか。

「ま、舞草さ」

「バックががら空きだぜ、ですよッ、えーい!」

ぎゅっ

「ぐあッ」

―――失礼。

でも、腕が首を締め付けて、苦しいーッ

「ちょ、ちょちょ、四人とも!」

「あーちゃんv」

「あきらさまv」

「あきらくんv」

「あーちゃんv」

ひいーッ

(何か、全員語尾にハートマーク付いてる気がする!)

な、何で?何で何で?!

ふと見ると、七瀬さんの隣にはいつの間にか白岐さんが立っていた。

すらりと伸ばした白い腕の、ほっそりした指先であたしのピコピコ跳ねた髪の毛をそっと撫でて、綺麗な顔がふわっと笑う。

「あきらさん―――可愛らしいわ」

し、白岐さんまで。

呆然と立ち尽くすあたしは、足元から白い砂に変わってさらさら崩れてくみたいだった。

ああ―――

さらさら、さらさらさら〜

 

「ルイ先生」

「なんですか、雛川教諭」

「うちのクラスの玖隆あきらくんなんですけれど」

「ああ、あの子がどうかしたんですか?」

「彼、可愛らしいと思いませんか?」

「―――そうですね、フフッ」

 

―――あたしの、受難の日々はまだ続きそうです、カール。

 

(終)