狭い屋内の戦いって、ホント凄く面倒。

辛うじて勝利したあたしは、戦闘後に現れたスニーカーを夷澤君に手渡してあげた。

なんだか懐かしそうな顔をしていたけれど、思い出の品なんだろうね、きっと。

そのあと三人で、砂の中をあちこち探してみたけれど、結局、桐箱は見つけられなかった。

ホントどこ行っちゃったんだろう、重要なアイテムみたいだったのに。

(また、明日にでも、このフロアに来て探してみよう)

今度はちゃんと、甲太郎も一緒に。

あたしたちは石造りの部屋や通路を通り抜けていく。

途中にも勿論、細かい戦闘が幾つもあって、けれど来る時よりは断然楽に進むことができた。

夷澤君、さすが死神の異名を持つだけの事はある。

本当パンチが凄いんだぁ。

多分、昼間はあれでも手加減していたんだろうね、それとも紛い物の力が抜け出して、実力が発揮されだしたのかな。

繰り出す拳は、どういう仕組みか、ひんやり凍気を纏っている。

殴った部分もそうだけれど、触れただけでも凍結するらしくて、そのパンチで夷澤君は並み居る化人たちを片っ端から張り倒していってくれた。

あ、勿論、あたしや双樹さんも交戦したんだけどね。

とにかく、そうやって、何とか地上に出てくると、月は大分西の方に傾きかけていた。

昨晩の出来事を思い出して、ちょっとだけ不安になる。

夕薙君、今日はちゃんと寮の自室で、カーテンを閉めて過ごしているかな。

墓守のおじいさんの姿は見当たらないみたいだけれど―――

「あきら君」

冷たい空気に、何となくぼうっとして、足元がちょっとだけもつれた。

どうしたのかな、急に、凄く眠い。

「あきら君?」

双樹さんの声。

振り返って見上げると、目が合った途端、ちょっと怪訝に眉を寄せられる。

「どうしたの?」

「ん」

「あきら君?」

眠い。

昨日と、今日で、凄く疲れた。

体中がミシミシいってる感じ、特に今日は―――プールであんなことがあったから。

(体力消耗したのかな)

けど、寮に戻るまで頑張らなくちゃ。

踏み出そうとする。

けれど。

「ちょっと!」

咄嗟に支えられて、あたしは気づけば双樹さんに抱きかかえられていた。

ダメ、限界だ。

「どうしたの、どこか、具合でも」

「んん、そうじゃ、なくて」

「先輩?」

「ちょこっとだけ、休ませて、そしたら大丈夫だから」

確かに魂の部屋で傷は完治したけれど、消耗した気力や体力まで完璧に回復するわけじゃない。

あたしは双樹さんの胸を押して、適当に、そこら辺の墓石に凭れて休もうとした。

座り込もうとする体をまた捕まえられる。

もう目が開かない。

双樹さんの声だ。

「夷澤」

「ハイ」

「責任もって、ちゃんと連れていってあげるのよ」

「わかりました」

「送り狼なんてしたら、二度と日の目を見られないようにしてあげるから」

「そッ、そんなこと、しませんよ!」

―――何だろ、うるさいなあ。

体がフワリと浮かび上がった気がした。

ユラユラ揺れる。

この感覚、今日は二度目だ。

「あきら君」

あたしが傍についているから、今だけは、気にせず休んで頂戴。

優しく髪を撫でられると、急に安心する。

悪いけど、ご好意に甘えちゃおうっと。

(少し休んだら、すぐ寮に戻るから)

混濁していく意識の中で、あたしは、「お休みなさい」って囁く夷澤君の声を聞いたような気がしていた。

 

続く