「異常なまでの」
「カリーの語源は諸説あるが、インド南部の方言タミル語の(Kari)が訛ってカリーになったっていう説が有力だ、そもそもの意味はソース、汁といったものであり、元々これほど辛味の効いた食品ではなかったらしい」
「いちごの歴史は古くてね、遡ると石器時代から野生のいちごが利用されていたんだって、スイスの湖畔から出た石器時代の遺跡からいちごの種子が見つかってるんだよ」
「インドでは専ら三食カレーだが、味や食材は地方によって異なる、宗教や人種の違いも影響している、まさに十人十色、千差万別なカレーが存在するというわけだ」
「果実以外に茎葉や根が薬用として利用されていたっていう古い記録も残ってるんだ、栽培種として生まれ変わったのは18世紀のオランダ、北アメリカ東部原産の(フラガリア・ヴァージニアナ)と、南アメリカチリ原産の(フラガリア・チロエンシス)を交雑して、栽培に適した種間雑種が誕生したんだって」
「インド料理なら全般的に言えることなんだがな、とにかく、どの料理にもスパイスを大量に使う、北の方では香りの強いものを好んで使用し、南なら辛さ重視だ、カリーの正式な食べ方は右手を使って食べる、イスラム教では左手は不浄とされているので使用しない、飯やカリーを右手の指先で混ぜ合わせて、スプーンのような形にして親指を使って口に入れるんだ、だから日本で食うものより全然熱くない、本場のカリーはぬるいんだ、まあ、俺は熱い方が好みだがな」
「初めて日本に入ってきたのは1830年、江戸末期の頃ね、オランダ人が長崎の出島に持ち込んだんだけど、栽培が定着しなくて、今みたいに一般化されたのは1900年に入ってからなんだ」
「日本人が初めてカリーに出会ったのは文久3年、幕府の遣欧使節の一団が船内で手づかみでカリーを食うインド人の姿を見て、何だか汚いものでも食っているような印象を持ったらしい、まったく失礼な話だぜ、俺ならすぐに一皿分けてもらうところだ」
「いちごはビタミンCの宝庫なんだよ、一粒につき約10mg前後、人が一日に必要とするビタミンCは約50mg前後だから、5粒食べるだけで必要量摂取できちゃう計算だよね、更に低カロリーで5粒で約20から25Kcal、いっくら食べても太らないんだから!しかも、ビタミンCにはコレステロール溶解効果があるから、新陳代謝の活性化や疲労回復なんかにもいいんだよ、粘膜や細胞強化効果もあるから、ウィルスの抵抗力だって高めてくれちゃうんだ」
「日本に入ってきたのはイギリス経由だって話だ、インドがイギリスの植民地だった頃、インドの食文化であるカリーをイギリス人が持ち帰り、シチューのようにアレンジしたものが伝わったらしい」
「いちごは実を食べるだけじゃなくて、花の咲く頃に葉っぱを摘み取って、乾燥させたものを煎じて飲むと、婦人病に効果があるんだよ、おいしいいちご選びのコツは、表面に光沢があって色が鮮やか、形がしっかりしていて、みずみずしくて、ヘタの周辺が白くないのが熟れ頃、食べ頃ね」
「明治5年に(西洋料理指南)(西洋料理)っつう二冊の本が出されて、それに(ネギとカエルのカレー)ってのが紹介されているらしい、美味いのか?まあ、それはともかく、何で長ネギかっていうと、その頃はまだたまねぎが無かったからだ、大正時代にはカレー粉が発売されて、一気に大衆料理の仲間入りを果たしたカレーは、戦時中には軍隊料理として広まり、現在のように深く浸透したらしい」
「ネギとカエルのカレーは、鶏肉とネギのカレーみたいで美味しいよ」
「そうか」
「今度作ってあげようか?」
「うーん、まあ、カレー好きを豪語する以上、食わないわけにはいかないだろうな」
「と、言うわけで」
ずっと話を聞かされていた、あたし、八千穂明日香は、その時になってやっと意識を取り戻したのでした。
「八千穂さんも食べる?」
「ん―――いらない、カレーもいちごも、もうお腹いっぱいデス―――」
(了)