「色情狂」
「紅葉?」
庭先に腰掛けて桜を眺めていた光の背後に、いつの間にか漆黒の影が立っていた。
影は、日の光を浴びて人型に変わり、そのまま光の隣に同じように腰を下ろす。
振り返った姿は日差しを浴びて金色に縁取られて、瞳は穏やかな暗青色をしていた。
「やあ、花見かい?」
そうだよと答える、色白の肌がほんのり色づいて綺麗だ。
壬生は瞳を細くする。
細い首筋、可憐な手足、滑らかな体のラインに、腹の奥の方で何かがぞろりと蠢く。
無意識に伸ばした掌で髪を撫でれば、くすぐったそうな笑みがこぼれた。
壬生は、そのまま指先で髪を遊び、奥に梳き込んで、流れに沿ってすらりと下ろす。
触れた耳の裏をなぞりながら、たどり着いた耳朶を軽く引っ張って、そのまま首筋を掌で覆うと、自然に体が傾いでいた。
「く、紅葉」
光が少し上体を逸らそうとしたのを許さず、喉元に口付けて強く吸い上げる。
唇で鎖骨まで伝って、隆起した骨を舌先でなぞり、吸い付くと、光は僅かに身じろぎをした。
顔を上げて確認すれば、桜色の痣が残る。
壬生は、起き上がって光の目の中を覗き込む。
双眸は金色に染まりつつあった。
もう少し近づいて、吐息が混ざると、瞼がこすれあうほどの距離に光の瞳がギュッと閉じられた。
唇を重ね合わせて、深く求める。
潜り込ませた舌先で口腔内をなぞれば、光の両手が壬生の衣服を握り締めてきた。
必死に受け止める姿に、抑えきれない愛しさを注ぎ込むようにして、情熱的な口付けを―――
ようやく―――解放されて、上気した様子で見詰めてくる、光の、乱れた吐息や緩んだ眼差し、濡れた唇が、堪らなく艶かしい。
「く、れは?」
「光」
「い、いきなり、何?」
「君に、僕の桜を散らしたくなった」
「え?」
「僕は色情狂なんだよ」
金の双眸がゆっくり見開かれていく。
滑らかな頬に口付けて、壬生の吐息が光の耳元をかすかにくすぐる。
「この桜が狂わせたのかな―――僕は、君にだけ、非常に貪欲で常に餓えているんだ」
薄紅色が舞う。
景色を覆いつくす花びらは、縁台にまで散っていた。
(了)
※この後朋恵に見つかってボコボコにされるもよし、最後までスルもよし、お好みでどうぞ(笑)