「柔らかな羽根」
ベッドに寝っころがって、苺のジュースを飲むあたし。
ふと気付くと、甲太郎がこっちを見てる。
「何よう」
「別に」
変な奴、またジュースを飲みながら、手元の端末のキーボードをパチパチといじくる。
振り返ったら―――やっぱり見てた、何なの、一体?
「なあに?人の事ジロジロ見て」
反応ナシ。
「ジュース欲しいの?」
「いらん」
「何してるか気になるの?」
「仕事だろ、どうせ」
「じゃあ、眠いとか」
「ベッドでなくても、俺は眠れる」
じゃあ、何?
「甲太郎」
視線だけで聞き返された。
「キス、したい?」
急に静かになる部屋。
真っ黒な瞳が、一瞬キラリと光る。
不意に、ゆっくりと、甲太郎が立ち上がった。
「したい」
そのまま傍まで近づいてきて、掌の下で軽く軋むスプリング。
瞼を閉じて、触れ合って、まるで柔らかな羽根のような―――キス。
「もっとしたい」
「どうしたの、急に」
「ストローなんか咥えてるからだ」
(―――バカ)
キスは、多分、苺味がしただろうと思う。
(了)