いずれ、無くしてしまうものなら、最初から無い方がいい。
触れ合うこの手も、温もりすらも。
ただ、怖くて、怖くて、もし本当の事を知ってしまったなら、なあ、それでもお前は俺を好きだと笑ってくれるのか?
あの愛しい眼差しで。
温かな笑顔で。
偽りの無い、澄んだ水のような言葉で、砂漠のように干からびた俺の心を癒してくれるのか?
教えて、欲しい。
もがいてもがいても、ただここには暗闇ばかりが広がっていて、終わりなど無い。
俺はうそつきだから、大切なものは自分で壊れてしまったから。
いや、俺が壊したのかもしれない。
目の前でお前が傷つくのは、とても怖くていやなんだ。
いずれその傷よりもっと酷い事を、俺がしなくてはならないのかと思うと。
して、しまうのだろうと思うと。
お前はどこまでも飛んでいける翼を持っている。
それは、人ならば誰でも産まれたときに与えられているものなのかもしれない。
けれどそんなものは、俺にしてみれば本当にくだらない、まやかしの希望の残滓でしかない。
この世には闇ばかりでもなく、ましてや光ばかりでもなく。
あるのはただ、暗鬱たる空と、ひび割れた大地だけ。
見果てぬ地平をさまよって、血を流すことさえなくなってしまった。
俺は死んだから。
居場所なんてなくなってしまったから。
なあ、だから、お願いだ。
もしもその手を放してくれないというのなら、いっそ、お前も落ちてくれないか?
その翼をへし折って、真実など永遠に消えてなくなってしまえ。
俺の闇の奥に、お前ごと押し込めて、鍵をかけてしまえば、俺は楽になれる気がする。
そしてその時、多分もう一度、そしてこれが最後で、俺は本当に死ぬんだろう。
明日など来ない。
瞳に輝く未来という芳しいその名を失って、抜け殻のようになったお前でも俺は愛せるから。
なあ、だから、いっそこのまま落ちてくれないか。
それで無ければ、その手で俺を殺してくれ。
思い出というお前の牢獄に繋ぎとめてくれ。
俺は、そうすることで、死ぬまでお前を縛り続けることができる。
そう、俺と同じように。
お前はきっと忘れない。
忘れることが出来ない。
それが、俺の残す最後の呪い。そして墓守の証。
共にあることが叶わないのならば。
いっそ。
お願いだ―――