ぼんやりと横になったまま、晃は空を眺めていた。

半裸の体の上には甲太郎の制服の上着がかけられていて、傍ではシャツ一枚の姿が少し寒そうにアロマを吹かしている。

「今、何時間目くらいだろう」

「四時間目だ、約半分くらい過ぎてるな」

「お前、時計持ってるのか」

「お前の端末で見た」

視線を向けると勝手にHANTのモニターを開いて覗いている。

晃はムクリと起き上がって、下肢に残る気だるさに顔をしかめていた。

「寝てろよ」

上着が膝の上に落ちて、さらしの解けた胸元が陽光に晒される。

シャツの合間から覗く豊なふくらみの上には、いくつもの赤い痣が残されていた。

ぬるつく秘所に指先で触れて、やむを得ず、我慢して下着とズボンを履きなおした。

内側から混ざり合った体液が動くたびにこぼれだすようだ。

朝から結局、二度も抱かれて、晃は精も根も尽き果ててしまった。

一体どこのどいつだ、屋上なんかに行こうとか提案したバカは。

何もかも、このムッツリの策略に嵌められたんじゃないかと、理不尽な思いが沸き起こってくる。

「昼休みになったら、さすがに人が来るだろ、その前に寮に戻らないと」

「いいのか?」

「今更」

晃は甲太郎を睨みつける。

「こんな状態で、教室までいけるとでも思ってんのか?」

「確かにそうだな」

のん気な笑顔が腹立たしくて、傍まで這って行って手元のHANTを取り上げる。

ざっくりとさらしを巻きなおして、シャツのボタンを留めると、ジャケットをきっちり着込んだ。

少しふくらみが目立つけれど、この際仕方ない、騒がしくなる前にさっさと帰ってしまおう。

フラフラしながら立ち上がると、甲太郎がオイオイと声をかけながら腕を伸ばして体を支える。

「戻るなら送ってってやるよ、お前一人じゃまともに歩け無いだろ、まだ」

「うるさい淫欲魔、お前の助けはもう要らない」

「そんなこと言える状況か、いいからつかまれ、ホラ」

肩に回そうとする腕を振り払って、そのまま殴りつけようとした。

甲太郎は振りかぶった拳を易々と避けて、笑う。

「お前の攻撃は見切った、二度は喰らうか」

言った瞬間膝蹴りが腹に決まっていた。

グオッと声を洩らして屈伸する様子を一瞥して、晃は屋上の扉を目指す。

「ま、待てよ晃、オイッ」

「うるさいバカ!ついてくんな!」

「晃!」

おぼつかない足取りで、こちらを振り向こうともしない。

甲太郎は舌打ちを洩らした。

直後に晃がギラリと振り返って、三角になった目で睨みつけられた。

「人の弱みに付け込んで、いやらしいことばっかり考えやがって、この変態!」

「だ、誰がっ」

「お前しかいないだろうが、バカ!」

勢いよく開かれたドアが、同じように勢いよく叩きつけられて閉じる。

一人取り残された甲太郎は、片手を前に突き出した姿のまま、情けなく立ち尽くしている。

北風が吹いてきて体を震わせた。

落ちている制服のジャケットを手に取って、着込みながらふてくされたように、唸る。

「ちょっとは俺の気持ちも考えたらどうなんだよ―――あの野郎」

アロマを吹かすと少し苦いような味がした。

甲太郎は頭をガリガリとかきむしって、クソッと吐き捨てていた。

勢いよく走り出す。

もちろん晃を追うためだ。

あんな姿のまま、一人で帰れるわけがないし、途中で誰かに出会ってもまずいだろう。

何より俺自身がこんな状態は嫌だ。

「ったく、バカはどっちだ」

開いた扉の先、階段の反対側の下に降りていく黒い髪が見える。

慌てて段を踏み外さないように気をつけながら、駆け下りていく甲太郎の背後で厚い扉がゆっくり閉じていった。

静かになった屋上を、ただ日の光だけが温かに照らし続けていた。

 

続く!