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 それは寒い冬の日。

コタツの天板に上半身をてろりと乗せた光は、ぼんやりテレビを見ている。

その隣の一辺に足をもぐりこませている壬生も同じようにブラウン管の向こうの特別番組を眺めながら、こちらはきちんと背筋を伸ばして座り、ミカンの皮を丁寧に剥いていた。

部屋には他に特に聞こえてくる音もなく、芸能人の笑い声だけが多少無機質に響き渡っているだけだ。

「光」

剥き終えたミカンを食べようとして、壬生はふと何かに気付いたように声をかけた。

顔を向こうに向けたままの光は、聞こえているのかいないのか、返事をしようとしない。

「光?」

ミカンを置いて、肩に手をかけて揺さぶってみる。

「光、寝るんなら」

「寝てないよ」

くぐもった声と共に、寝そべったまま光は顔だけ振り返った。

「退屈だなーって思ってただけ、眠くなんかない」

「そうか」

納得してミカンに意識を戻そうとした壬生の手を、光が急に捕まえた。

壬生は動作を止めて、握られた手をじっと見ている。

光は無言で指先を唇まで持っていき、第一間接のあたりにキスをした。

第二間接にもキスをして、捕らえた指先で自分の唇をなぞって、先端をぱくりと口腔にくわえ込む。

壬生はされるがままだった。

柔らかな舌が指先を絡め、吸い付き、そのうち一本だけをちゅ、ちゅと音を立ててしゃぶる。

指の腹をくすぐるような感触にそこを少しだけ動かすと、光はぱっと口を開いて壬生の手を開放した。

唾液に濡らされた自身の指を唇まで持っていって、壬生は舌で付着した体液を丁寧に舐め取っていく。

光の見ている前で、最後の一滴まで残さず喉に流し込んだ。

そのまま無言で立ち上がり、流しで軽く手を洗う。

戻ってきて腰を下ろすと、光がイタズラっぽい目で微笑みながらポツリと呟いた。

「ミカンの味がした」

壬生は微笑んで、彼の柔らかい黒髪を撫でた。

「そうか」

ミカンを割って半分渡すと、光はまた向こうを向いてテレビを見ながらそれを食べているようだった。

「行儀悪いよ」

「うん、ごめん」

謝ったのは形だけで、反省して行儀を正すつもりはないようだ。

軽く嘆息して、壬生は口の中にミカンを一粒放り込む。

甘酸っぱい柑橘系の風味が、今を少しだけ楽しいものに変えてくれたようだった。

 

(完)