「NO-Title17」
好き、好き、好きな気持ちばかりが溢れて、どうしようもない。
いつだって側にいたいけど、それってちょっと迷惑かもって考える自分がいて。
その時距離が出来るような気がするけれど、いつだって君はその距離を飛び越えてきてくれる。
だから、好き。
もっと好き。
凄く好き。
「はあ・・・」
窓の外を見て溜息だなんて、いまどき女の子だってやらない。
バカみたいだなって、思う。
でも思い浮かべるたびに勝手に出てくるんだから、こんなの俺のせいじゃないぞと改めて誰かに言い訳してみたりしていた。
空は蒼い。
太陽は輝いている。
紅葉は、ここにいない。
(当たり前だ)
学校違うんだし、今まだ授業中じゃないかと合いの手が入った。
「はあ・・・」
午後の太陽は無駄にまぶしくて、京一などはよだれの海に沈んでいるようだった。
教科担当はすでに諦めた素振りで起こそうともしない。
爆睡中の寝顔を見ていると、世界は平和だなーなどと思う。
そんなわけ無い。
まだ何も解決していない。
この日常の下では、とぐろを巻く蛇がいる。
(でも、今は)
平和だった。平和すぎて不安になるようだった。
平和と紅葉は繋がってない気がする。でも、一緒にいるときの紅葉は繋がっている気がする。
この、色々な面倒くさい事が全部なくなれば、やっぱり逢いたいとか言っても迷惑がられるのかな。
彼はいつだって隣にいることの出来る人じゃないから。
触れられたくない闇だってあるだろうから。
それなのに、俺なんかに気を使って、寂しそうな顔なんて絶対に見たくないよ。
(なんか俺、いっつも紅葉の事ばっかり考えてるよなー)
気付けば思ってしまう自分は恋をしているのだろう。
紅葉が好きだと思う。
いつからそう考えるようになったのか覚えていないけれど、気付いたら目で追っていた。想っていた。
そうなってしまえばとめることなんて出来なかった。
紅葉に会いたい。
すぐに会いたい。
今会いたい。
(滅茶苦茶言うな、俺)
ボケボケしている耳に、鐘の音が鳴り響いたのだった。
どうやら授業が終わったらしい。内容をほとんど覚えていないという点で、俺も京一と同じようなもんだ。
先生ごめんなさい。復習ちゃんとやります。
チャイムが鳴って、はっと気付いた京一が顔を上げてきょろきょろしていて、近づいてきた小蒔に殴られたりしていた。
「美里、ノート取った?」
「あら、めずらしいのね、貴方がノート取り忘れるなんて」
ちょっとね、と答えて苦笑する。
あたりはやはり平和だった。
そして放課後。
やっぱり紅葉の事ばかり考えて、帰りの挨拶をして、靴を履いて、外に出る。
紅葉を想いながら歩く。
校門に差し掛かったとき、馴染みの奇跡が声をかけてきたのだった。
「光」
君を想う時、いつも答えてくれる貴方がいる。
それがとても嬉しい。
だから俺は、やっぱり紅葉が好きなんだなーとか思う。
一緒に馴染む平和だって、悪くないじゃないか。
だから、好き。
大好き。
(完)