AnotherSide5

 

 酔いつぶれた人間の体はともかく重い。

グッタリしている豊を引きずって、彼の部屋にたどり着くと薙は勝手知ったる様子でドアを開けた。

担いだ体を畳の上に放り出して、よれよれになった襟元を整えつつ溜息を吐く。

全く不謹慎極まりない。

あんな痴態を、公衆の面前にさらすだなんて。

他の奴らの豊を見る目がなんとも不愉快で、強引に連れ帰ってきてしまった。

「うー、苦しい」

豊は寝転がったまま呻いているので、薙は少し逡巡してからしゃがみこんで襟元に手をかけた。

ホックを外し、前を開いてやるとようやく一息ついた様子の彼が緩んだ瞳でこちらを見詰める。

「なぁぎぃー」

両腕が伸びてきて、薙の制服を握り締めた。

「しわになる、放せ」

「ヤダ」

エヘヘと笑って、豊はそのまま上半身だけ起き上がった。

ギュッと抱きついてくる熱い体を、片腕で支えてやる。

「ねえねえ」

耳元にかかる吐息が酒臭かった。

宴会の前にアルコールが苦手とか言っていたなと、おぼろげに思い出していた。

「しよっか」

小さく囁かれて、薙はわずかに困惑した表情を浮かべる。

「何をするんだ」

「エッチ、れす」

エヘヘと笑う声に驚いて顔を覗き込むと、酔って上気した豊はとろんとした目で薙を見ている。

彼は今、アルコールに精神を支配されているらしい。

結論付けながら、その艶かしい視線に体の中心に急速に熱が集まってくるようだった。

「なぎー」

抱きついてきた豊が、首筋にキスをした。

そのまま音を立ててチュ、チュと繰り返している。

舌先がねろりと頚動脈付近を舐めて、シャツと肌の間に顔をうずめるような格好になった。

「君は」

薙はわずかに呆れた声で、体を抱く腕を二本に増やす。

「酔うと淫乱になるようだな、注意が必要だ」

「なんのぉ?」

「決まっている」

豊の体を引き剥がして、シャツのボタンを外しながら薙は答えた。

「今後一切飲酒は禁止だ、僕のいないところで、他の誰かと飲んだりするな」

豊はきょとんとしてから、けらけらと楽しげに笑った。

りょうかーいとのん気な声を上げてキスをねだってくる。

唇を深く重ねながら、指先は器用な動きであっというまに豊の上半身を裸にしてしまった。

ベルトを引き抜き、チャックを開いて、下着の中に手を差し込む。

「あ、アン・・・」

普段聞いた事もないような可愛らしい声に、背筋がゾクゾクと震える。

薙はニヤリと口元を歪ませた。

「時々は、少し飲酒させた方が、具合がよさそうだ」

「んー、ナギ、キスしれぇ」

舌を絡ませるキスの後、首筋に顔をうずめる。そこから鎖骨に続くライン上に何度もキスを落として、制服に隠れてしまう場所には強く吸い付いて痕をつけた。

「ああ、アン、もっとして」

胸元に唇で触れつつ、指の腹で乳首を転がす。

胸板の形を確認するように唇を何度も這わせて、その間片手で桜色の突起をつまんだりすりつぶしたりして満遍なく刺激を与え続けた。

もう片方の手は下着から出て、豊の脇腹をなぞるように何度も上下している。

滑らかな表面は薙の心を震わせた。

肌の感触を楽しむように、腹から背中にかけて、なだらかな隆起を掌で確認する。

「アン、ハア、あ、アアン、なぎぃ」

息の上がった豊が、合間合間に名前を呼んだ。

火照って熱くなった胸が激しく上下している。

汗ばんで、しっとりした表面はうっすら紅色だった。

豊は薙の頭を両手で抱え込むようにして胸に抱きしめていた。

「薙、薙、なぎ」

小さく繰り返す声に、愛しくて首筋に口づける、そのまま起き上がって見詰めると、また唇を重ね合わせた。

舌先で口腔内を何度もなぞり、歯の裏側や頬の内側に先端で触れる。

豊の舌はそれに絡みつくようにして動いていた。

薙の両手はその間も豊の体のあちこちをすべり、指先は執拗に胸元を愛撫した。

「あ、はあ、んん、は、あふ、ふ、うう、ん」

口付けの合間に甘ったるい鼻声が漏れる。

薙は起き上がって豊を抱き起こすと、座った自分の膝に背中をこちらに向けるようにして体制を移動させた。そして自分も上着を脱ぎ捨てて、袖口を少しだけ捲り上げる。

「これ、ヤダぁ、なぎが見えないよう」

「我慢しろ」

後ろから首筋に口づけて、両手で豊のズボンを下着ごと下にずらす。

そして現れた彼の局部を、片手の中にそっと収めた。

「あっ、やああん!」

首筋へのキスを繰り返しながら、薙はゆっくりと掌を上下させて刺激を与え始めた。

それと同時に空いているほうの手で豊の腹から胸をまさぐり、愛撫を続行させる。

「あ、あは、ああっ、ああ、ああっ」

体中を震わせて、豊の手が両脇にある薙の足を掴んだ。

表面を弱い力で握りながら、胸にもたれて何度も声を上げる。

「ああっ、あん、あ、あはっん、ん、ああっ」

なんて蠱惑的な声だろうと思う。

薙の体中を支配して、奥の方から自分でも信じられないような強烈な欲を引きずり出されてしまう。

ずっと失ったとばかり思っていたのに、まだこれほどの感情の波が自身に起こりうる現実にただ驚いていた。

彼を抱く時、いつも感じる未知の感覚。

興味深く、心が沸き立ち、何もかもがとろけていってしまいそうなそれ。

よりはっきりと知りたくて、変わっていくものが何かを見極めたくて、更に、更にと豊を求めてしまう。

もっと、もっと、こんなものではまだまだ全然足りない。もっと君が欲しい。

「豊っ」

思い余って名前を呼ぶと、それだけで興奮が押し寄せてくる。

手の中で張り詰めた豊の性器は、先端から先走りの体液をにじませていた。

それを指の腹で塗り広げながら、擦り、緩く揉んで、何度も刺激を繰り返す。

豊は嬲られる自分の一部に視線を落としながら、速い呼吸の合間に甘い声を洩らし続けていた。

「あ、やああ・・・ハア、ハア、あ、アンっ」

肩に、首筋にとキスを繰り返していた薙は、顔を寄せて上気した豊の横顔を覗き込んだ。

潤んだ目元に浮かぶ涙も魅力的だ。

片腕で体を強く抱き寄せて、そのまま男性気に与える刺激を一気に加速させた。

「あ、ああ、アアアアッ」

豊は悲鳴のような声を上げながら、堪えきれず精を吐き出していた。

手の中でビクビク震える感触を十二分に味わって、付着した白濁色の液体をペロリと口に含む。

豊は腕の中で荒い呼吸を繰り返していた。

口腔内に苦いような、少し塩気のあるような、独特の豊の風味が広がっていた。

唇から引き抜いて、濡れた指先を豊の唇に近づけると、彼は小さく開いた口の中にぱくりと咥え込んだ。

舌先がチラチラ触れる感触をしばらく楽しんだ後で、薙はするりと指を引き抜く。

「とっておきのお楽しみが、まだだ」

耳元で囁いて、豊の体を少しずらした。

そのまま両足を掴み、全体的に斜めに寝かせる。

腿と膝の辺りまで下ろされたズボンが拘束具のように体を縛り、豊は丁度局部から尻にかけて露出するような格好を取らされた。

いつもならここで羞恥のあまり猛烈に抵抗されるのだが、まだアルコールの抜けていない彼はぼんやりした眼でどこを見るともなく呆けている。

薙は少しだけ移動して、手を伸ばして引き出しを開くといつもの場所に収まっているローションを取り出す。蓋を開けながら、こういうとき狭い寮の部屋は便利だとつくづく感じ入っていた。

再び背中から豊を抱き起こして姿勢を整えると、両足の付け根にローションをたっぷりかけてやる。

「わ、冷たい」

薙はこめかみにキスをして、指で探り当てた場所にぬめりをすり込んでいった。

括約筋に触れた途端、豊の体がビクリと震える。

「あ、やあ、ダメぇ」

指先をつぷりと中に入れて、少しずつ深いところへ沈ませていく。

「あ、や、あん、あ、あ、あ」

一本入り込んだ事を確認して、少しずつ入り口を広げるように指を動かしはじめた。

豊は薙の胸にもたれたまま、艶かしく声を洩らして悶えている。

それだけで辛抱たまらなかったが、この後を考えて薙は丁寧な愛撫を続けた。

潤いを与えられて、徐々に柔らかく馴染んでくる部分に頃合を見計らってもう一本指を足す。

挿入した途端、豊の体がわずかにしなった。

「あっ、ああっ、ダメ、ナギ、そんなにいっぱい、入んないっ」

「問題ないだろう、ほら」

ちゅく、ちゅくと卑猥な音を立てながら、薙の指は二本ともちゃんと豊の中に納まっていた。

「ああイヤぁ、あん、それ、ヤダよぅ」

可愛らしく鳴く豊に何度もキスを落として、奥の方を先端でくすぐるように触れる。

二本の指を、水音を立てながら出し入れを繰り返す。

ローションと、少し前に吐かせた豊の体液を使って、彼の秘所はもう大分解きほぐされていた。

それでもなお念入りに触れようとする薙に、豊が不意にくるりと首を向けて鼻声でねだった。

「もう、指はいらないよぅ・・・薙のを、挿れて」

薙は一瞬ぎょっとして豊を見詰めた。

普段では絶対、口が裂けても言わない言葉をこうも易々と口に出す。

(本当にアルコールに弱いようだな)

艶やかな視線に、心臓がバクバクといつもより激しく鳴っていた。

興奮が激しすぎて、限界などとっくに飛び越えてしまっている。

薙はフッと笑うと、指を引き抜いて自分のベルトを外しにかかった。

チャックを下ろすとすでにいきり立った肉茎が欲望のはけ口を求めてひくついている。

「やはり、君に飲酒はよくない」

囁いて、体を引き寄せると、よく慣れたそこに怒張した先端を押し付けた。

「僕以外とは、絶対アルコールを摂取するなよ、これは命令だ」

そのままひと息に突き上げた。

念入りに施しておいた愛撫のおかげで、特に抵抗もなく薙の局部はするりと豊の中に飲み込まれてしまう。

「あっ、アアアアッ」

豊が悲鳴をあげた。

後ろから抱きしめて、なだめるように何度もキスをしながら、まだ赤く熟れたままの豊自身を掌に収める。

優しい刺激を繰り返しつつ、挿入したショックが収まるのを待った。

豊は荒い呼吸を何度も繰り返した後で、汗ばんだ体を薙の胸にくったりと倒れこませた。

様子を伺って、薙はゆっくりと律動を始める。

「あ、あう、はあ、あ、アアン」

くちゅくちゅと、中に入れた部分ごと腰を前後に練るように揺らす。

豊は目を閉じて、体中で感じているようだった。

「あ、はん、なぎぃ、凄く、イイ、よ」

とろけそうなほど甘い声だった。

たまらず、薙はうっとりしている豊を覗き込んで、頬にキスをした。

腰に腕を回して体を支えてやりながら、掌で器用に局部をしごき続けた。

内側でこすれあう音が聴覚を刺激して興奮をより強くする。

豊の感じる快楽と、薙の感じる快楽は今完全に一つに混ざり合って、同じだけ互いを伝え合っていた。

薙は揺する動きを今度は縦に突き上げ始めた。

コツコツと、根本が尻にあたるたびに抽挿して掻き出されたローションが肌を濡らす。

合間に聞こえる水音がなんとも卑猥だ。

豊はアンアンと鼻声で鳴いている。

初めて見る、快楽に溺れきった彼の痴態は、今までで一番満足いく姿だった。

「気持ちいいか」

囁くと、うん、うんと何度も首を縦に振る。

「もっと、モットよく、して・・・ナギ、好き」

薙はキスを落として、擦る手を早くする。

「あ、や、ダメ、そんな早くしたら、俺、もう、アアッ」

ビクリと体が震えて、豊は再び精を吹き上げた。

そのまま汚れた手で薙は太ももを掴み、体の角度をほとんど垂直にして膝の上に落とし込んだ。

屹立した肉茎が豊のより深い部分へと突き刺さる。

「っあ?!

豊が体中を振るわせた。

「うあ、ああ!あ、ウソ、や、あ、あ、ああっ」

体ごと両足を抱きしめて、薙は繰り返し激しく腰を突き上げる。

そのたびに滴り落ちる水滴が畳を汚した。

「あ、ダメっ、なぎ、だめ、ダメ、そんな、しちゃ、やあっ」

豊は涙目で初めて抵抗めいた言葉を口走っていた。

けれど、それも慣れない体位での交接に戸惑っただけで、アルコールによって程よく自我を失った精神はすぐに慣れてしまう。

気付けば彼も腰を振って薙に応えていた。

「豊、いいぞ」

薙の声が囁く。

「豊」

「ああっ、はっ、な、薙、なぎっ」

豊は腕にしがみつくようにして喘ぎ続けた。

薙も、もはや何も考えられない。

今ここにあるものは、夢中で貪りつくす肉体だけ。

汗や性の匂いが鼻腔を強く刺激する。

柔らかな腸壁をグイグイと擦り上げ、そのたび甘く切ない声で鳴く豊に薙は所構わずキスを繰り返した。

加速する快楽が、その頂点にたどり着いたとき。

「アッ、アアーッ」

ひときわ強く突きあげた薙の局部がビクビクと震えた。

ほぼ同時に、熱いほとばしりが内側に叩きつけられる。

グッタリと胸に沈み込んできた豊を抱きかかえて、薙は深く息を吐き出していた。

「豊」

覗き込むと、汗が額を伝っている。

頬を紅く染めて、瞳を閉じた豊の表情はこの上なく愛しかった。

薙は触れるだけのキスをして、まだ熱くぬるついている部分からゆっくりと肉茎を引き抜いた。

こぼれた精液が、豊の下肢と畳を汚した。

少しだけずれた体を再び抱き寄せると、そのまま豊の肩口に薙もグッタリと顔をうずめる。

心臓が、全力疾走の後のようにバクバクと鳴っていた。

伝わってくる彼の動悸も大分早い。汗と、生臭い匂いがあたりに満ちている。

汗ばんだ表面に軽く唇で触れながら、薙はぼんやりと制服をクリーニングに持っていく事を考えていた。

「・・・先に、脱いでおくべきだった」

豊は気を失ったように動かない。

薙もじっとしていると、ゆるゆると持ち上がった手が髪に触れた。

「ナギ」

囁く声に顔を上げる。

疲れた表情の豊は、それでも幸せそうに微笑んで言ったのだった。

「もっかい、しよ?」

 

 翌朝、豊は昨日の痴態などすべて忘れ去っていて、わずかに薙がガッカリしたとかしないとか。

石見に見つかった三人組は、グラウンドを五十週走らされたという。

今度のことで薙は一つの悟りを開いていた。

可愛らしい恋人は、そんな彼の心の内など露知らず、昨夜乱れに乱れた後遺症で腰が痛いとぼやいていた。

酒は飲んでも飲まれるな。

そんな事を一同が考えたかどうかは、不明である。

 

なぞめいた終わり方・・・でも満足(笑)