※ゲーム未クリアの方はお読みになられませんよう、ご注意申し上げます。
「1st-Discovery」
鏡を見ながら唸り声を上げる。
2004年、9月21日、午前七時。
昨日の夜に守衛さんに案内されて、やってきました天香学園。そしてここは、男子寮。
あたしは男子学生服に身を包み、短い髪の毛をわざとくしゃくしゃにして(もともとそんなにさらさらキューティクルって訳じゃなかったんだけど)見えない部分はさらしでギュウギュウに巻いてある。
ううん、キツイ!
「男物の洋服って、やっぱり全然面白くないよね、あーもう、せっかくのハイスクールライフなのにィ」
あちこち見回して、悔しいけれどやっぱり溜息が漏れてしまった。
あたし、フェロモンが足りないんだろうか。
目の前にいるのはどっからどう見ても、小柄な、変声期前の男の子。
多分素で通用しちゃうだろう。
ちょっと日焼けした肌に、骨っぽい体。こげ茶色の髪と緑色の目(これは、やっぱり目立っちゃうかな?かなり近くで見ないと翠だってわかんないんだけど、おまけに日に当たると赤く見えるし)声だって、そんなに女の子してないから、ある意味完璧な変装って言えなくもない。
「―――くやしい」
くぬぬと唇を噛み締めて、鏡にパンチくれそうになるのを何とか我慢しきった。
そのうち出て行く場所なんだし、器物破損は最小限に押さえとかないとね。
もう一度、天香学園の男子制服姿の自分をよくよーくチェックして、鞄とHANTを持って、部屋を出た。
人の姿は無い。
気を使った先生が、少し遅く出ていらっしゃいってわざわざ言伝してくれたおかげだ。
まだ見ぬ先生様、ありがとうございます!
「さすがに、心の準備ってモノがいるからね」
いきなり男の子達にもみくちゃにされたら、ホンと参っちゃうだろう。
ドアを閉めて、明るい寮の廊下を一歩踏み出した。
これが初めの一歩。
あたしの―――大切な、お仕事の始まり。
そんな風に考えながら歩き出すと、自然と意気込みみたいなものが盛り上がってくるようで、まあ状況は最悪なんだけど、とりあえず元気が出てきた。
やるっきゃないときは、やるしかないのだ!
「あたし―――っとと!」
ゴホ、ゴホン。改めて。
「俺ッ、頑張っちゃうぞぉ!」
両腕を一杯に振り上げて。
うぉおおおと走り出す、寮の外に飛び出すと、ビックリするくらい快晴だ。
「やるぞー!」
えい、えい、おーッ
鼻息荒く、初登校の道のりを行く、あたしの姿を真っ赤な紅葉達も応援してくれている。
日本って四季があるから素敵よね。
って言うか頑張らねば。そもそもの目的は、この―――
ふと足を止めて、ポンポンと地面を蹴って、ニッコリ笑った。
そう、別に学生さんする事が目的じゃない。
大体そんな目的だったら、こんな依頼引き受けませんでした。
あたしの目的はただ一つ、それはこの、天香学園地下に眠る、おそらくとんでもなく広大な―――遺跡の探索、なのだから。
髪の毛を朝の風がさらりと撫でる。
校舎はすぐそこだった。
あたしは顔を上げて、あらためて、灰色の建物を真っ直ぐ見詰めて、ちょっと笑顔になりながら歩き始めた。
つめえりの首元がやっぱり苦しいなーとか考えながら。
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