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11th-Discovery

 

 ベッドサイドに持ってきた椅子に腰掛けて、あたしは横たわる夕薙君の姿を見つめている。

遺跡から出た直後、差し込んできた月の光。

レモン色の綺麗な輝きに照らされた夕薙君は、あっという間に全身の表皮が干からびていって―――

(ミイラみたいだった)

あれは、紛れもない、墓守のおじいさんの姿。

そのまま気を失って倒れた夕薙君のこと、甲太郎が背負って、あたしは付き添いで、神鳳君がルイ先生を呼んできてくれたんだ。

神鳳君は用があるからってすぐ部屋を出て行っちゃったんだけど、あたしと甲太郎、それに、ルイ先生は、残って夕薙君の容態を窺っている。

先生は簡単な診察のあとで、何故こんなことになったのか、どういう状況だったのか、あたしたちに詳しい説明を求めて、それから自説を少しだけ聞かせてくれた。

恐らく、夕薙君の変調にはバイオタイドの影響が出ているんじゃないだろうかって。

けれど正確な事はやっぱり何一つわからないらしい。

遺跡から地上に出るまでの間、夕薙君が話してくれた、彼の悲しく、重い過去。

呪詛や、怨嗟の類が無いと言えない世界で仕事しているあたしには、結構身につまされる内容だった。

彼自身が探している、彼にかけられた呪いの正体。

それが早く見つかることを、祈るばかりなんだけれど。

「玖隆」

血の気の失せた唇が動いて、ようやく意識を取り戻した夕薙君は―――あたしの腕を捕まえて、かすれた声で言った。

「喪部に気をつけろ」

「えッ」

驚いたのは内容よりも、彼が喪部を警戒していたっていう事実。

そりゃ、あたしは、前にフィルから色々聞いていたし、奴の正体にも目星がついていたから、当然要注意人物としてチェックしていたわけなんだけど、夕薙君はそっち方面に関して何の情報も持っていないはず。

彼が、喪部を気にしていたのは、彼なりの理由があっての事だった。

はるか昔に出雲と津軽を収めていた豪族、蝦夷。

他国から訪れた異邦人たちは『乱暴者、まつろわぬ者』の蔑称を受けて、荒吐神を祭り、東方で強大な権力を有していたという。

(アラハバキ)

七瀬さんと神鳳君が、何か気味の悪いものに取り付かれていたとき、口走った名前だ。

夕薙君はどうやら、この名前を聞いたとき、喪部の存在にも何かしらの不審感を抱くに至ったらしい。

大昔の神様が遺跡の奥で待っているとか口走っていて、そんでもって七瀬さんが話してくれた天香遺跡の特色、喪部の出現、なんだか、全部がひとつの線で繋がっているよう。

(あたし、真相に近づいているのかな?)

それはもう何十年、ううん、数百年にわたって隠蔽されてきた、歴史の表舞台に上がらない真実。

それこそ、ハンターとしてあたしの追い求める『秘宝』ってモノなんだけれど。

話し終えた夕薙君は、最後にあたしの役に立てたかどうか訊いてきた。

あたしが頷くと、嬉しそうに笑って、そのまま―――今度こそ意識を失って、ベッドに深く沈みこんだ。

放された腕を握り締めながら、俯いていたあたしの肩に触れて、甲太郎が少しだけ体を寄せてくる。

「お前ももう休め」

「でも」

「あとは俺が付いてる、何かあったら知らせてやるから、部屋に戻れ」

「甲太郎」

「疲れているんだろう?」

振り返った先に見えた、優しい瞳。

ルイ先生も同じ様な事を言ってくれて、あたしは結局、二人の好意に甘える事にした。

たくさんの人が、あたしの支えになってくれている。

(有難う)

甲太郎だって、あたしの戦闘を手伝って、疲れてるはずなのに。

(ごめん、ね)

部屋に戻って、フラフラベッドに近づくと、そのままばったり倒れこんだ。

あたしは、自分が想像していた以上に疲れていたらしい、すぐに意識は眠りの淵へと落ちていく。

 

目覚めたとき、屋内は、朝の清浄な光で満たされていた。

 

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