※ゲーム未クリアの方はお読みになられませんよう、ご注意申し上げます。
「2nd-Discovery」
今朝からずっと頭が痛い。
昨日、何だかんだでプールのシャワールームまでの道のりが遠すぎて、仕方なく濡れたタオルで身体を拭くだけにしたから、ずっと気持ち悪くて仕方ない。
それはただ単純にお風呂に入れなくて不潔だとか、そういう話じゃなくて―――アレ、の時の、いろんなものが、多分まだ体中についたまんまだっていうのが一番の原因だったりする。
今もまだ若干中に残ってるんじゃなかろーか。
そう考えるとますます気持ち悪くて、いっそ学校サボって浴場を使っちゃおうかとも思ったんだけど、あんまりヘタな博打は(今だけは)打つ気になれなかったから、涙を呑んで我慢した。
女の子として、かなりの屈辱。
この恨み、絶対はらさでおくべきか!
すっかり臨戦態勢で登校したっていうのに、肝心の怨敵はまだ教室に来ていなかった。
(おのれ、皆守甲太郎めぇ)
苛々しながら一時間目の理科室へ向かう途中、あたしの爪先が何かをコンと蹴飛ばす。
「あれ?」
見下ろすと、石?
「なにこれ、何で廊下にこんなものが」
拾ってみると、結構綺麗な石だった。
一言に石っていっても、侮っちゃいけない、世界には色々な石が存在しているのだ。
それは国や、場所、土地や地形なんかで各種多様な種類や形状、色、質量などがあって、見てると案外あきがこない。昔は拾ってきた石に絵を描いて遊んだりもしたんだけど。
「いい石だなあ」
何気なく呟いた一言だったのに、すぐ傍の教室の扉の陰からいきなり人影が飛び出してきて、君!とビックリするほどの大声を上げた。
「へ?」
「おおお、君、君だよ、君こそ、我が理想の理解者だ!」
「は、はい?」
目の前に現れたのは、男の子。
ウェイブのかかった髪に黒ぶちの眼鏡をかけて、黙ってたら結構ハンサムだろうけれど、今の様子ははっきり言ってかなり変態入ってる。
唖然としているあたしに構わず、いきなり手を掴んでブンブンと上下に振り回した。
「わ、わわ、ちょ、ちょっと、何ですかいきなり!」
「いいねえ、君、凄くいいよ、この石を見て綺麗だなんて、君には見込みがある!」
「な、何の見込みですか?」
男の子はぴたっと動きを止めた。
眼鏡の奥で、瞳がキラリと光る。
「フフフ、それはね、僕が部長を務める崇高な集まり、遺跡研究会の一員となれる見込みだよ」
はあ?
あたしはわけがわからなくて、頭一杯に疑問符を浮かべて首をかしげた。
「ええと、遺跡研究会と、石と、どういう関係があるんですか?」
「よくぞ聞いてくれた、それはだねえ!」
―――それから数分間、石にまつわる濃ーい話を聞かされて、あたしの脳みそはフワフワ、すっかり飽和状態になってしまった。
男の子は黒塚至人と名乗った。
「一つ聞きたいのだけど、君、ザラザラした石を見ると舐めてみたくなるかい?」
「えーあーまあ」
「おお、素晴らしい!」
またまた手をギュギュッと握られる。スキンシップ過多の人だなあ。
いい加減うんざりしていたあたしの顔をまじまじと見詰めて、黒塚君はやたら嬉しそうにニコニコ笑っていた。
「君となら、いい友達になれそうな気がするよ」
「ああ、それは、どうも」
「そうだ、遺跡研究会の部室は南棟の4階にあるから、今度是非遊びにおいで、歓迎するよ」
「ありがとうございます」
手の甲をすりすりして、もう一回ギューッと握られて、それから、なぜか―――頬を『ポッ』と赤らめて、変な彼は変な歌を歌いながら踊るように廊下を去っていった。
―――最後のアレは何だったんだろう。
あたしは暫らく呆然として、それからくるりと踵を返した。
無視無視。ああいうのは気にしないに限る。
この学園には変な人がたくさんいるみたいだ。
それとも、日本の学校はどこもこんな感じなのかな?どちらにせよあたしにはあんまり縁の無かった事だ。
「まあいいや」
どうせ、仕事が終わるまでしかいないんだしと、すぐ考えるのをやめてしまった。
ヘタな考え一回休みってヤツだ。違ったかな?
けど、それまでの間に必ず、皆守にだけは絶対一泡吹かせてやらなくちゃ、あたしの腹の虫が納まらない。
知らない間に押し付けられてしまった石をぎゅうぎゅうと握り締めて、ポケットに手を突っ込むとチャイムの音が廊下に響いた。
「いけない!」
慌てて走り出す。
窓から、綺麗な秋晴れの空が覗いていた。
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