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8th-Discovery

 

 朝、起きて、ご飯食べて、学校に行く。

もう二ヶ月近くそんな生活を続けているから、すっかり習慣づいちゃった。

そんでもって目覚めると、いつでも隣に皆守の姿があって、そんなつもり全然無いのに、一緒にご飯を食べて、支度させて、部屋を出るのまで一緒、ぜんぶいつもどおり。

「あー、眠い」

「うっさい、大体ねえ、皆守はいっつもいつもどうしてそんなに眠いわけ?何か悪い病気かなんかじゃないの?」

「フン、俺の睡眠不足は、お前のせいだ」

言った直後にニヤリとか笑って、こ、こいつーッ

頭に来て、飲みかけの食後のコーヒーをさっさと片付けてやった。

まったく、大体こいつときたら、例の『お支払い』の一件だけじゃなくて、そのまま毎晩部屋に泊まるもんだから、追い出すために仕方なく、そう、仕方なく朝の準備をして連れ出しているっていうのに、最近ちょっと勘違いされ始めているような気がしなくも無い。

あのね、はっきり言わせて貰うけど、あたしは別にボランティア精神や、ましてや愛情なんかであんたの世話を焼いてるわけじゃないんですからね!

皆守はアロマの紙巻の本数を確認して、シガレットケースに詰め込んだものを、制服の胸ポケットにしまいこんでいる。

あたしは、ピコピコはねまくっている髪の毛を、気持ち程度に頑張って整えて(っていってもくせっ毛だから、コレが全然整ってくれないんだよねぇ)カバンを掴んで玄関に向かう。

ドアの手前で靴を履いて、立ち上がったところを捕まえられて、キスされて、睨むと、皆守は眉間をちょっとだけ寄せてから、自分の靴を履きだした。

先にドアを開けて、飛び出したあたしの目に差し込んでくる、朝の光。

うーん、気持ちいいッ

ぐーと伸びをしていたところで、端末がピコピコ鳴った。

こんな朝から何用?

取り出して、モニタを確認すると、新着メールが一件追加。

開いて中を読んでたら、やっと皆守が部屋から出てきて、片手を差し出してきた。

あたしは鍵を手渡しながら、相変わらずモニタの文字を目で追いつつける。

ガチャリと音がして、振り返った皆守が鍵を差し出しながらあたしを見て、それと殆ど同じくらいに、あたしも、ぽかんと口を開いたまま、皆守を見上げたのだった。

「どうした?」

怪訝な様子に、こっちはまだ呆気に取られたまんま、端末の画面を見せる。

「これ、何だろ」

ざっと目を通して、皆守の表情が急に曇る。

一体、何事?

「夜会のお誘いって、夜会ってなんなの?」

「―――年に一度、生徒会主催で開かれるダンスパーティーの事だ」

相変わらず難しい顔をしたまま、渋々、といった感じで皆守は説明してくれた。

「何でも選ばれた生徒にだけ招待状が贈られてくるって話だが、その、そもそもの選考基準が明確にされていない、おまけに、パーティーの夜には必ずといっていいほど事件が起こる」

「事件?」

「生徒が失踪したり、怪我をしたり、まあ、色々だ」

それは穏やかじゃないなあ。

「そんな物騒な問題ありのパーティーなのに、どうして中止されてないの?」

「主催が生徒会だからな、毎回、その代の生徒会長が強権執行で計画、実行しているって話だ、それに」

「それに?」

「特別って言葉が好きな人間は、世の中にごまんといる」

なーるほど、ねえ。

つまり総じて胡散臭い集まりだけれど、その胡散臭さが人気の秘訣ってわけか。

ううん、なんだか気になるじゃない。

モニタに表示されたメール本文をじっと見詰めるあたしは、すでに参加する気が高まりつつある。

だって、こんな機会そう無いじゃない。

しかも招致元は―――あの生徒会、会長殿。

阿門君とかいったっけ?

前に一度だけ、そう、狙撃された日にちょこっとだけ顔をあわせたことがある。

真っ黒で、背が高くて、不健康なくらい真っ白で、そんでもってお団子頭の、子供の癖に妙に威圧感のある男の子。

いや、あたしも子供なんだけどさ、何と言うか、阿門君とは年齢差を感じずにいられないんだよね。

あの人本当に現役なんだろうか?

アレコレ考えをめぐらせていたら、急にぐしゃりと髪の毛を混ぜられて、慌てて見上げると、皆守がつまらなそうな、ちょっと呆れてもいるような顔でアロマをふかしながらあたしの事を見下ろしていた。

「何でもいいが、こんなところでぼんやりしていると、遅刻するんじゃないのか?」

そ、そうでした!

「うわわ」

急いで端末を閉じて、駆け出そうとした途端、すぐ傍を通りかかった男の子ぶつかっちゃった。

痛い!

(何事?!)

今、バチンってしたよねえ?

もんの凄い静電気に、男の子も振り返って、あたしを見てからビックリしたように目をまん丸に見開いていた。

あれ?

この人って―――

(アラビア系?)

きょとんとしているあたしを引っ張り寄せて、腕に抱きこまれながら、皆守の声が降ってくる。

「悪いな、えーと」

「トト、デス」

相変わらず黒水晶みたいな目が、あたしの事をジーッと見てる。

な、何?

(と、いうか)

この状況はどういう事だ!

あたしは腕を振り解きながら、改めて男の子に頭を下げた。

「ごめんなさい、俺、うっかりしてて」

「イエ、構イマセン、ボクモチョトソノ、不注意デシタ」

あらら、拙い日本語。

皆守がそう読んでたから、彼の名前はトト君っていうらしいけど、留学生か何かなのかな?

「アノ」

顔を上げたアタシに、トトくんは何か言おうと口を開きかけて、止まる。

「うん?」

「イエ―――」

そのまま、くるりと背中を向けて、一気に廊下を走って行っちゃった。

あたしはまたきょとんとしたまま見送る。

一体なんだったわけ?

「怪我でもしたのかなあ」

「静電気でか?馬鹿言うなよ、そんなわけあるか」

「だよねえ」

そしてあたしは、ハッと気付いて、慌てて端末を開いて機能を確認してみた。

あー、大丈夫だ。

まあ、あの程度の電圧でどうにかなっちゃう代物じゃないんだけどね、一応。

ホッと胸をなでおろしたのもつかの間、皆守がまたあたしの頭をポンポンと叩いて「学校」って呟いた。

うわあ、今度こそ、急がないと遅刻だ!

「皆守、走るよッ」

「はぁ?何で俺まで」

「いいから、走るのッ、遅刻するだろ!」

「ったく、めんどくせえなあ」

ぶつくさ言いながら、それでもちゃんと後からついてくる。

こういうところ、皆守って、律儀なんだか何なんだか、よくわかんないんだよねぇ。

(まあ、どうでもいいか)

あたし達はすっかり人気の無くなった寮の廊下を、一緒に駆けていった。

 

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