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9th-Discovery

 

「皆、静かに!」

教壇に立つヒナセンセの姿は、今日も魅力的。

美人で、頭もよくて、でも仕草なんかは可愛くて、内側に一本芯が通った才色兼備の女教師。

(見かけないよねー)

あたしは机にだらりと身体を預けながら、ぼんやり思う。

まあ、こっちの業界には素敵な女性がたくさんいるけれど、一般にカテゴライズされる人たちって、案外主義主張もなく、メディアに踊らされちゃってる、装飾された茶筒みたいな人が多い。

中身が無くて薄っぺらいから、お話しててもすぐ飽きちゃうんだ。

ラブソングだって、変なのばっかり流行ってるみたいだし。

(そういえば)

皆守って、日本のポップスをあんまり聴かない。

アイツの部屋にいるときは、何もかけていないか、日本語以外のロックやブルースばっかりかかってる。

たまに、日本のシンガーも混じるけど、男性で実力派の歌限定だ。

(そんでもってやっぱりロックとか、ブルースなんだよね)

R&Bも聞いてたかな。

あたしの言語能力に国境は無い。

皆守は殆ど意味なんてわかっていないんだろう、時々、あわせて口ずさんだりもするんだけど、怪しげな言語が多くて結構面白い。

でも発音自体は、凄く綺麗なんだ。

文法や筆記とか、形式ばったものは苦手みたいだから、多分現地言語をそのまま叩き込むような学習方法のほうが成果を挙げられるんじゃないかな。

あたしのパパやママと一緒にあちこち点々とする暮らしを暫く送り続けたら、あっという間にペラペラになっちゃうような気がする。

(って、あたしは奴を家族に紹介するつもりですか)

―――あたしとの関係を具体的に説明したら、多分ヤツは、パパとクライスに殺されちゃう気がするんだけど。

(いや、確実に殺されるな)

カールにも殺されちゃうかもしれない。

(そしたら皆守は、通算二度殺されるわけだ)

なんだかちょっとおかしい。

そしたらあたしは、せめて絆創膏くらい貼ってあげようかな?

(なーんて)

皆守の席の方角から、くしゃみが聞こえてくる。

寒いのかな。

今夜は何かあったかいもの、そうだ、お鍋にしようとか、そんなことを考えていたときだった。

Ciao patata!」

はい?

いきなり周囲がざわついて、それと殆ど同じくらいに、あたし―――抱きしめられてる?

「お?」

ガターンと音がして、横目で窺ったら、中腰の皆守が倒れた机の脇でこっちを凝視していた。

あたしを抱き上げた何かは、ええと、どうやら男性のようですね、制服、男の子用だし、体つきもがっしりしてる、ふんわり香ったこれは、香水?

(ムスクかな)

ヒナセンセのあたふたした声が聞こえてきて、教室全体が一気に騒がしくなった。

あたしは、とりあえずこの両腕の拘束から逃れようとして、体をひねる。

berry

耳元に囁く声。

(コードネーム?)

ギョッとして、慌てて彼の顔を確認してみたら。

 

Non pensate è raro Mio è persona bella

Vento rosso!」

 

口から飛び出すイタリア語。

そうです、彼は―――知り合いです!

燃えるような赤毛に緑色の瞳をしたイタリア人男性は、呆然とするあたしの鼻に、鼻先をちょんとくっつけて、今度は日本語で、ご機嫌な挨拶をかましてきたのだった。

「君に逢いたくて、こんな場所まで来ちゃったよ」

 

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