そんでもって何だか知らないけれど、皆守の機嫌が異様に悪い。
一時間目までは教室に居たんだけど、授業終了のベルがなると同時に出て行っちゃった。
(そういえば、この間)
―――トト君と遺跡内部で戦った直後から、ちょっと様子が変なんだっけ。
戦闘直後の夜は、あたしの部屋で一緒に過ごした。
その日、何故だか知らないけれど、奴は『支払い』を要求してこなくて、あたしも疲れ果てていたから、毛布に包まってただくっついて眠ったんだった。
翌日の晩は、そもそも姿自体見かけなかった。
あれから、えーと、今日で何日?
実はあたし、以来『お支払い』を一度も求められていないのです。
(コレって凄く異例の事じゃない?)
天香に着任して、皆守にあたしの秘密がばれてから、毎晩、まあ一日二日くらい間隔が空く事もあったけれど、それでも基本的には毎夜ごと、『口止め料』の支払いを強制され続けてきた。
あたしも、弱みを握られている手前、逆らえなくって、やむを得ず、あいつのなすがままにされていたんだけど―――
(それって、本当はどうなんだろう)
最近、そのあたりについて、具体的に考え始めると、色々とわからなくなってくることが多い。
初めてのとき、あたしは間違いなくヤツに恐怖して、体が動かなくて、そのまま、一気に体の純潔を奪われちゃったわけなんだけど。
(でも、おんなじ様な状況だったけど)
鴉室さんのときは嫌だったんだ、それはもう、本気で。
タイミングよく墓守のおじいさんが現れてくれたから良かったようなもので、もし、あのまま行為を強制され続けていたら、あたしは多分、鴉室さんとガチバトルに突入してた。
協会では脊髄反射みたいな戦闘方も教えてくれる。
いわゆる、命の危険に晒されたとき、意思に関係なく体が動くっていう訓練。
思考する時間すら死に直結するような場面で発動するものなんだけど、そうなったらもう自制は効かないから、鴉室さんが逃げるか死ぬまで戦う事になっただろう。
まあ、あの人もそれなりに使い手みたいだし、そんな事になればどっちも無傷じゃいられない。
色々な意味で、かなり危うい場面だったわけなんだけど―――そう考えると、ますますわからなくなってくる。
じゃあ何で、皆守のときは、それが起こらなかったんだろうって。
エッチ自体が初めてだったから?慣れていなくて対応が遅れた?
(いやいや)
確かに、これまで散々ヤツと関係して、そういう行為自体にはかなり慣れちゃった節もあるんだけど、でも相手は皆守限定で、だから鴉室さんのときはものすごーく嫌だったわけで。
たまたま、ぼんやりしていたから?
(そんなわけないでしょ)
そこまで間抜けじゃないし、そもそも、そんなことではこの業界で生きてなんていけない。
今頃あたし、すでに死んでる。
じゃあ、何で?
(わかんない)
自分の事も、皆守のことも、あたし達の関係の事も、よくわからない。
でもこの頃は、皆守の事を考えてると、だんだん胸がドキドキしてきて、落ち着かない気分になっちゃう。
これって何?
(はあ、やっぱりドキドキするなあ)
なんだか顔も熱いみたい。
「ううー」
思わず唸り声を上げたら、視界に男の人がひょいっと覗き込んできた。
「どうしたの、ベラ、僕の可愛い人、浮かない顔だね」
「フィル、ここでもそんな調子で過ごすつもりなの?」
あたしたちは今、イタリア語で会話している。
フィルは大げさな態度で嘆いた後で、今度は日本語で話しかけてきた。
「久しぶりに会えたっていうのに、まったく、君はつれないなあッ」
「フェルディナンドクンと、あーちゃんは知り合いなの?」
脇から八千穂さんが興味津々で身を乗り出してくる。
「そうだよ、可愛らしいお嬢さん」
芝居がかった挨拶をして、そのまま、フィルは八千穂さんの片手をスイと持ち上げる。
「うわわ」
そのまま立ち上がらせた姿を、ウェストに片手を添えながら、スイッと抱き寄せた。
相変わらずスムーズでこなれた仕草。
(あーあ)
―――またか。
「そういえば僕らはまだ個人的に自己紹介をしてなかったね、僕の名前はフェルディナント・ヴァレンチノ、フィルと呼んでください、東洋の可愛らしいお嬢さん」
「あ、う、うん」
「君の名前は?」
「あ、あたしは、八千穂明日香」
「アスカ、素敵な響きだね、まるで野に咲く可憐なデイジーの花のようだ」
「はあ」
「ねえ、アスカ、この僕はこの学園に来たばかりで、まだあまり多くの事を知らない、だから、もしよければ、あちこち案内して欲しいんだ、ダメかな?」
「えッ、アッ、う、うん、いいけど」
「よかった! NOと言われたらどうしようかと思ったよ、君はとても優しい人だね、アスカ、それじゃあ早速2人きりでどこへ行こうか、一階?二階?それとも―――ああ、恋人同士が愛を語り合えるような、素敵な場所はどこかないのかな?」
「ええッ」
「こら、フィル!」
調子に乗ってるフィルの腕から、あたしは半ば強引に八千穂さんを奪還した。
ヨロリとよろめいた八千穂さんは、そのままあたしに凭れかかってくる。
身長差約3センチ、おまけにテニスで鍛えた八千穂さんの体は案外筋肉質で、重い。
けれどあたしは両足をグッと踏み縛って、しっかり支えきった。
これくらいでよろけてられませんって。
そのままフィルを睨みつけてやろうとした途端。
「おっと!」
周りで見ていた女の子たちが、周囲にわっと集まってきたのだった。
(な、何事?)
おんなじ様に驚いているフィルに、女の子たちは色々な事、例えば生年月日とか、血液型とか、そういう可愛らしい事を、根掘り葉掘り訊きまくっている。
どうやら、お話しするチャンスをずっと窺っていたみたい。
まあ―――そういうこともあるかもしれないよね。
だって、フィルって外見だけ見れば、ハリウッドスターでも十分通用するくらいの美形だもん。
大勢の女の子に取り囲まれて、流石のフィルもお手上げみたいな顔をしていた。
(自業自得、だね)
それでもさわやかに笑いながら、一人一人に丁寧な対応をバッチリ決められちゃうんだから、ある意味大したものだと思う。
「あーちゃん」
あたしは顔を上げる。
「アリガト」
ちょっと照れ笑いの八千穂さんに、気付いて、急いで抱きしめていた体を手放した。
「ごめんね、大丈夫?」
「えッ」
「俺の知り合いが、妙な事してホントにごめん、その、気を悪くしたんじゃないかな」
あたしが誤ることじゃないんだけど、でも、フィルは一応同業者だし、知り合いだから。
八千穂さんはニコニコ笑いながらあたしの肩をポンポンと叩く。
「平気だよ、ちょっとびっくりしたけど」
「そ、そっか」
「でも、フィル君って格好いいよね、顔も格好いいし、あたしあんな事言われたの生まれて初めてだよ」
「え?」
(ええっ)
「フィル君って、イタリアの人?あーちゃんと話しているとき、言葉がそれっぽいかなって思ったんだけど」
女の子の輪の中ででれでれしているフィルをじっと見る八千穂さんに、あたしは急激に不安になって、慌てて制服の裾を引っ張った。
「だ、ダメだよ、ダメダメダメ!」
まさか、そんな事ないと思うけど、八千穂さんまでフィルに興味を持ったら、色々と厄介だ。
アイツってばとんでもない女たらしだし、言い寄られたら絶対にNOって言わないんだもん。
それこそ、好みのタイプであれば、老若男女なんでもござれ、みたいなところがあるから。
(そんでもってさっき八千穂さんのこと可愛いとか言ってたし!)
危険だ。
果てしなく危険すぎる。
「八千穂さん、アイツはダメ、やめといた方がいいよ!」
「どうして?」
不思議そうにする八千穂さんに、あたしはコソコソと耳打ちをはじめる。
フェルディナント・ヴァレンチノ、通称フィル。
これは話さなかったんだけど、協会ではフィルとだけ名乗っていたから、多分今の名前は偽名だろう。
コードネームは『ヴェントロッソ』日本語訳は『赤い風』
その名の通り、風みたいに気まぐれで、あいつに泣かされた女性は数知れず、あ、でも女ハンター諸氏には総じて軽くあしらわれているみたいなんだけどね。
依頼人にまで手を出す厄介者だから、協会でも手を焼いているって話だ。
ただ、ハンターとしての腕前だけは一流どころで、だからこそただの伊達男で終わらない。
ある人は国ごとに愛人のいる男だって言っていた。
実はあたしもスクール時代に口説かれた事がある。
フィルはすでにハンターライセンスを獲得していたにも拘らず、何故かあたしのスクール受講開始と同じくらいに入学してきて、それから約二年半、生徒に混じって一緒にカリキュラムをこなしていた。
色々な人に理由を訊かれていたみたいなんだけど、詳細は誰も知らないらしい。
風みたいに気まぐれっていうのもコードネームの由来らしいから、もしかしたら単純に、生徒の中に自分好みの女の子がいないかどうか、探りに来ていたっていう可能性も考えられなくないんだけど。
とにかく、八千穂さんにはやたら女好きの優男だから近づかない方がいいって力説したら、彼女は黙ってあたしの話を最後まで聞いて、はにかんだ笑顔と一緒に頬を染めていた。
「大丈夫だよ」
「えッ」
「たしかに、フィル君って格好いいけれど、あたしはあーちゃんの方が格好いいと思うから」
「は?」
―――何でそこであたしが引き合いに出されるの?
(ああそっか、あたし、男子生徒だもんね)
何だかよくわからない納得の仕方をして、でもなんというか、微妙に居心地が悪いんですけど。
生あったかい八千穂さんの眼差しに、ちょっと居たたまれないような気分。
えーと、こういうのなんていうのかな。
暫く無言であたしをじっと見詰めていた八千穂さんは、そうだ、って急に話題変換をする。
あたしはまだドギマギしています。
「ねえ、あーちゃん、この間の夜会」
「え?」
「来なかったでしょ!来るって言ってたから、あたし待ってたのに!」
え、えーと。
(もしかして、八千穂さんにも招待状が届いていたのかな)
そっか、確認しなかったんだっけ。
「八千穂さんにも、招待状が届いていたの?」
八千穂さんは「うん」って頷いて、それから今度はちょっと頬を膨らませながら、あたしを睨む。
「あーちゃん誘ってくれないから、会場で会ってビックリさせようって、思ってたのにッ」
「ご、ゴメン」
「多分誰かから聞いてると思うけど、女の子の髪がシャンデリアに張り付いちゃったり、寮に帰ろうとしていた男の子が石をぶつけられて歯が何本も欠けちゃったりして大変だったんだよ!」
(ごめんなさい八千穂さん)
現場にあたし、いました。
今度は別の意味で居たたまれなくなっていたら、それに、って少し語調が低くなった。
うん?
「多分、アレ、皆守クンだったと思うんだけれど」
外見には出さなかったけれど、途端あたしはビクーンと体中を強張らせる。
(そ、そこで、何故皆守?)
「夜会って仮面舞踏会だったんだ、だから、会場の人はみんな仮面をつけていて、そのせいで顔は確認できなかったんだけど、でもあれって、雰囲気といい、多分皆守クンだと思うんだよね」
「う、うん」
―――ドキドキ
そこはかとなく嫌な予感。
「ともかく、その、皆守クンらしき男の子がね!な、何とッ」
ハイ。
「真っ白いドレスを着た女の子と一緒だったんだよ!」
(ひいいいいいーッ)
いや、まて、落ち着けと直後に自分で自分をなだめまくる。
八千穂さんは『真っ白いドレスの女の子』って言っただけであって、別にあたしと結びついてないじゃない。
「ね、びっくりした?」
無邪気な表情が、ニッコリ笑いかけてくる。
まるでイタズラを成功させた子供みたいなんだけど、こっちは別の方向で激しくドギマギしています。
「う、うん、まあ」
しどろもどろに答えると、八千穂さんは「だよねー」って満足そうに頷いた。
「やっぱり仮面で顔は見えなかったんだけど、でも皆守クンって案外面食いじゃない?だからさ、きっと凄く可愛い子だと思うんだよね、それで、多分あれって双樹さんだと思うんだけど、真っ赤なドレスの女の人と一緒に現れて、広間の中央でダンスしてね、それがまたすっごく上手でさあ」
皆守って、面食いだったんだ。
(知らなかった)
「でね、ダンスが終わって、一人で窓辺にいっちゃったから、あたし、声かけようかなって迷ってたんだけど、先に皆守クンらしき男子が近づいていってね!」
八千穂さん、女の子ナンパする癖があるもんなあ。
白岐さんといい、七瀬さんといい。
「何か、すっごく親密な雰囲気だったんだよねー」
(―――まあ、それは)
親密といえば、親密な関係だけど、でもあんまり認識したくない。
うう、またなんかドキドキしてきたぞ。
「二人きりでコソコソ、話しなんかしちゃって、皆守クン顔真っ赤でね、咽ちゃって、何て言うか、二人はラブラブ?」
「らッ」
ラブ?
頭の中でグワワーンと鈍い衝撃が走る。
そ、それはありえませんから、確実に、絶対に!
(勘弁して)
突如ビクッとして、グッタリしたあたしと対照的に、八千穂さんはいよいよ乗りに乗りまくっている。
「ホント、ビックリだよね、やっぱり皆守クンって彼女いたんだーッ」
「は、あはは、あは、あはははは」
もう、笑うしかない。
後で理由なんか絶対話さないで、皆守のこと、一発ぶん殴ってやろう。
―――そこで、あたしはふと思い至っていた。
(あれ?)
そういえば、八千穂さんって。
「ねえ、八千穂さん」
「うん?」
「八千穂さんって、皆守のことが好きなんじゃないの?」
質問した直後、ギョッとしたあたしと、きょとんとした八千穂さんは、同時に無言になって、それから、直球過ぎた質問に後悔しきりのあたしの肩を、八千穂さんがポンポンと叩くと、もう片方の手を顔の前で『ナイナイ』って振り返してきた。
「違うよ」
「え」
「何でそういうことになったの?」
(は?)
「ありえないでしょー!あたしが皆守クンを?まさか、やっだあ!あーちゃんったらアハハハハーッ」
あはははーって、えーっと。
(そうなの?)
「友達としてなら、勿論、好きだよ、でも皆守クンって何だか放っておけない弟みたいでさ」
お、弟?
(皆守が聞いたら、きっと凄い勢いで反論するに違いない)
いや、そうじゃなくて。
あたしは「ホント?」って聞き返した。
別に、確証が欲しかったわけじゃなくて、単純に受け入れられなかっただけだ。
だって八千穂さんは皆守のことが好きで、だからいつもあんなに気にかけているんだろうなって、ずっとそう思っていたから。
でも、あたしの疑惑は、直後の八千穂さんからの気持ちいいほどに直球ストレートな返答によって、見事に打ち砕かれていた。
「だって皆守クン、好みじゃないもん」
(はああああッ)
な、成る程!
それなら、凄く納得、っていうかわかる。
(た、確かに、そうだよねーッ)
好みでもない人の事、好きになんて、なかなかならないもんねえ。
しかも相手はあの皆守だし。
(じゃあ、八千穂さんって、ただ単純に、果てしなく世話焼きなだけだったんだ)
何だか急に、力が抜けた。
あたしの洞察力って、まだこの程度だったんだ。
はああ、もう少し訓練しないとなあ。
(同性の恋愛感情すら見抜けないだなんて、不覚)
やっぱりこの仕事が終わったら、一度スクールに戻ってみっちり鍛えなおしてもらう必要があるかもしれない。
(ああ、もしかして、フィルもそのためにスクールに戻ってきてたのかなあ)
「あーちゃん」
不意に両手を握られて、見上げたら、ほんのり頬を染めた八千穂さんがじーっとあたしを見詰めていた。
「あたしの好みのタイプはね」
―――はい?
「可愛くって、強くって、とっても頼りになる、優しくていつでも元気いっぱいの子なんだ」
「そ、そう」
「身長なんかはあんまり気にならないの、あたしより小さくったって全然問題ないし、多少秘密があっても、それくらいの方がワイルドで格好いいと思うんだよね」
「へえ」
「抱きしめられたら赤くなっちゃうような、そんな純粋な人がいいの、柔らかいふわふわした髪の毛で、肌も白くて、目の色がちょっとだけ変わってて、細くて、なんだか女の子みたいでね」
「ぐ、具体的だね」
「そんな子―――どっかにいないかなあ、ね?あーちゃん」
ね?って。
あたしの背筋に、嫌な気配がぞわぞわっと這い登ってくる。
ちょっと待った。
(ち、違うよね?)
そういうことじゃないよね?
(今のはただ単純に、八千穂さんの理想の男性像の話だっただけだよねッ)
ひいーッ
硬直しているあたしと、何だか恥ずかしそうに、ちらちらあたしを見ている八千穂さん。
非常に居たたまれない雰囲気の中、響く始業合図のチャイム。
慌てて振り返ったら、女の子たちからようやく解放されたフィルが、肩をすくめて見せてから、スマートな動作で席に戻っていった。
もう何人かうっとりした表情で背中を眼で追い続けてる。
さすが、フェミニストを公言する伊達男。
(もう何人か毒牙にかかったのか、ご愁傷様)
八千穂さんが、席に着こうって、あたしの制服の袖を引っ張ってきた。
「あ、え、えーと」
ダメだ、今のままじゃ、おとなしく椅子になんて座ってられない。
「どうしたの?」
非常に申し訳ないんだけど、あたしは、半ば逃げ出すようにして、教室から飛び出していた。
八千穂さんにはちょっとお腹が痛くってーとか何とか叫びながら、振り返らないで一気に走る。
気持ち悪いとか、そういうことじゃないんだ。
だってあたしは今男子生徒のフリをしているわけだし、それなら、こういうことがあったって、何ら不思議はない、と、思う。
(のかなあ?)
自分がモテるなんて事、万に一つも予想すらしていなかった。
だってあたしってば小さいしガリガリだし、顔はまあ十人並みくらいかな、とは思うんだけど、でもフェロモンらしきものをまるで感じたことがないし。
(八千穂さんも、具体的にあたしの話をしていたんじゃないとは、思う、んだけど)
あううーッ
いよいよ自信がなくなってきた。
天香学園に着任して以来、あたしの想像もしないようなことばっかり起こるよ。
ううん、人生って、きっとこういうものなんだよね。
何が出てくるかわからないビックリ箱。
だからこそ面白いし、ちょくちょく、こういうピンチも、やってくる。
ひとつ勉強になりました。
(でも、頭を冷やしたら、またいつものあたしに戻ろう)
八千穂さんの気持ち、あたしの想像通りだったとしたら、ご期待には添えそうもないし、違っていたとしても、やっぱりお友達だから。
(ゴメンなさいッ)
校則無視のスピードで廊下を疾走する、今あたし、猛烈に罪悪感。
―――最近逃走ばっかりしている気がする。
(もうヤダ)
半ベソのあたしは、今度こそ協会の情報部に向けて「バカヤローッ」とか叫ばずにいられないような気分だった。
(次へ)