※ゲーム未クリアの方はお読みになられませんよう、ご注意申し上げます。
「Epilogues」
玖隆は旅客機の小窓から外を眺めている。
周囲を慌しく歩き回っていたスチュワーデスたちが、離陸予告のアナウンスと共に席へと引き上げ始めた。
その姿を少しだけ目で追って、もう一度外を眺めた。
今だけ電源を落としているHANTを手持ち無沙汰にパタンと開いて、また閉じる。
空は暗く、瞬く星も空港のまばゆい光に負けて、今だけは見えない。
小さなため息と共に、やがて機体はゆっくりと、前進を始めた―――
―――ロゼッタ協会遺跡調査ファイル、ファイルナンバー*****
調査対象、日本国
調査報告者、ID.0999
日本国の中央都市、東京。
同都市内に於ける流通の要である一地域、
同学園は日本国が定める高等学校三年制の一定水準教育修得を目的とし、個人の自主性と社会性を育成する目的の元、所属する学童及び教員各位は同敷地内に於ける共同生活を定められている。
これにより、同学園は全寮制とされ、特別に許可を得るか、長期休暇を利用する以外の外出を禁じられている。
天香学園は、立地の地中深くにSランクの遺跡を有しており、調査にあたりこれを『天香遺跡』と呼称する。※ハンター規約第九条に該当
天香遺跡は、全十二階層より成る逆四角錐型の空間を有しており、深度はおよそ六十メートル、化人と呼称される亜種生命体の存在と、最下層の玄室に超古代ロストテクノロジーの産物と思われる実験サンプルを確認。※資料K−3
天香遺跡は同学園内に於ける最高統括集団『生徒会』の人間が管理及び監視を行い、侵入者を退けてきたものと推測される。
担当者が現地に赴き、調査を開始すると共に、彼らは要所で妨害活動を行ってきた。
しかし担当者はこれを各個撃破、且つ、交戦した生徒会構成員の協力を得ることに成功、遺跡最深部への到達を果たしたが、前述生態サンプルの襲撃を受け交戦、結果、天香遺跡はその意義を失い(資料文章12参照のこと)内部はほぼ全壊、生態サンプルも同様に、地中深く埋もれて回収は不可能となった。
※協会の依頼(資料A−1公式文章第一種)自体は先行潜入に成功していた他ハンターが遂行、詳細は遺跡統括局秘宝管理課のオーパーツ管理ファイル、ファイルナンバー*****に記載。
※目的の達成及び、以降の探索活動続行不可能と判断せざるを得ない状況から、協会は2004年12月某日を以て依頼終了を担当者に通達済み。
(同ファイルに天香遺跡調査文章正文及び、担当ハンターの調査報告書原文、参考資料等添付)
―――暮れていく夕日がオレンジの残滓を天香学園の屋上に投げかけている。
「晃か」
ふわり。
甘い花の香が漂った。
「夕陽が、こんなに鮮やかな色だったとはな」
振り返った皆守は、フェンスの側で、やけに優しい目をしていた。
出逢った時と少しだけ違うのは、夕栄えする風景と、八千穂がいないこと、そして。
「墓の奥で、お前を残して死んでいたら、二人でこの景色を眺めることもできなかったんだな―――」
左の薬指に輝く、片割れのリング。
確認して、玖隆は拳を振り上げた。
頬を張る乾いた音が鳴る手前、皆守が一瞬、微笑を浮かべたように見えた―――
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