背後で深々と吐息が漏れるのが聞こえた。

「晃」

囁かれて、ゆっくりと腰が上下する。

合わせて晃の体も縦に揺れて、乳房が震えた。

甲太郎の掌が片方の胸を優しく包んで揉みながら、もう片方の手が下腹部の辺りを抱いていた。

首筋に何度もキスをされて、そのたびに頭の心がとろけそうなほど熱くなっていく。

「ば、バカ、この変態、淫欲魔、発情期、野郎っ、ぬ、抜けよ、アッ、アッ、俺、は、風呂、入りにッ、ン、アウッ」

「お前、往生際が悪すぎるぞ、観念しろ」

「や、ヤダッ、アンッ」

内壁にこすり付けるたび、愛液が襞と甲太郎自身の合間でジュポジュポと音を立ててあふれ出す。

膝の上で泡にまみれながら、晃の白い体が艶かしい動きを繰り返す。

シャワーの湯気が差し込む陽光にキラキラと輝いていた。

甲太郎は確かめるようにあちこちに触れて、そのうち指先が、異物を飲み込んだ入り口の少し上をくにゅくにゅと嬲り始めた。

「うああっ、ア!」

瞬間的に走りぬけた電流に、ひくついた内壁に締め付けられて低い声がウッと洩らす。

奥深く突き上げたままわずかに出入りを繰り返す感触が腹の奥をかき混ぜている。

晃の丸めた背中に覆いかぶさるようにして、挿入と愛撫を同時に行う甲太郎の熱い吐息が肩から鎖骨に吹きかかっていた。

「こ、こうたろ、ヤ、ヤだ、やめ、ろ、よっ、き、気が変に―――アウッ、なりそう、だっ、ア、ア、アンッ」

「こっちは悦んでるぞ、クッ、お前も、自分に正直になれ」

「お、お前は正直すぎだっての!」

グッと胸を揉まれて、声を洩らすと強引に横を向かされた。

キスをしながら前倒しの姿勢を取らされて、少し浮いた腰が動きやすいように甲太郎は姿勢を変える。

そしていきなり激しい抽挿を始めた。

肌がぶつかり合う音に顔をしかめながら、腹の下で四つんばいにさせられて晃が鳴き声を上げる。

「アッ、アッ、アア!甲太郎っ、そ、な、乱暴にしたら、お、俺ッ」

「晃、やっぱお前、スゲ、いいぜっ」

「なっ」

「俺と、合うのかも、なッ」

「ふ、ふざけんな、ア、ア、アアッ、や、ア、アンッ」

はちきれそうなほど膨張した局部をキュウキュウと締め付けながら、時折肉襞が震える。

その感触がたまらなくて、甲太郎は更に晃を求めた。

愛しくて切ない、胸が苦しいくらい何かで溢れかえっていくようなこの気持ち。

眼下では自分の与える快楽に溺れて晃の姿が身悶えている。

そのことが興奮に益々火をつけて、もっともっと、全部奪ってやりたくなる。

浴場には出しっぱなしのシャワーの音が相変わらず響いていた。

タイルの上で、裸の肢体が絡み合う。

本人は意図していないのだろうけど、鼻にかかった晃の鳴き声は、甲太郎の雄を刺激してそろそろ限界を迎えつつあった。

極限まで張り詰めた自身は爆発寸前だ。

後ろからギュッと抱きしめて、肩口に顎を乗せて、耳元に呼びかける。

「晃ッ」

震えた横顔がコクコクと、何かを察したように頷き返した。

初めて返された肯定的な意思表示に、甲太郎は少しだけ瞳を見開くと、フッと微笑んで頬にキスをする。

「いく、ぜっ」

ひときわ奥を貫かれる感触と共に、熱いほとばしりが内側に吐き出されていく。

同時に晃の体がビクビクと震えて、意味を成さない言葉が唇から漏れていた。

収縮を繰り返して、堪っていた全てを注ぎ込むと、甲太郎は満足げな溜息を落としながら背中にのっしと体重をかけた。

重みで晃が潰れかかると、慌てて半身を起こしながら悪いと小声で謝る。

「ば、かァ」

うずくまる体内から濡れた自身を引き抜いて、抱き起こしてやりながら甲太郎は額やこめかみに何度もキスを落とした。

「少し無茶しすぎたか」

「少しじゃない、滅茶苦茶だ、このバカ、アホ、サル」

「サルって何だよ」

「だって、昨日からヤリっぱなしじゃないか、俺の意見も尊重しろって言っただろ、このサルめ」

「ハイハイ」

シャワーを取ると、体のあちこちを丁寧に流していく。

ボディソープと一緒に付着した体液の類を洗い落とされて、くったりと胸にもたれたままの晃を横抱きに抱き上げると甲太郎は湯船に向かって歩いていった。

「ば、バカやろ、どこの世界に男を横抱きする野郎がいるんだ」

「お前今は女だろうが」

「ううううるさい、女だろうが何だろうが、こんな恥ずかしい状態は」

「恥ずかしいことなら今十分楽しんだじゃないか、まだ時間もあるだろ、風呂に浸かっとこうぜ」

ついでだとか何とか、訳のわからない事を言いながら甲太郎は湯船の脇に晃を降ろすと、覆っていた蓋を全て取り払った。

暖かな湯気を立ち上らせる水面に手を突っ込んで温度を確かめてから、もう一度横抱きに抱き上げて一緒に湯船に浸かる。

異様なほど恥ずかしいこの状況に、晃は耳まで赤く染めて俯いていた。

「オイ、晃」

「な、何だよ」

「照れてんのか?」

「うるっさいバカ、お前には羞恥心とかそう言うものは無いのか!」

低い笑い声が浴室に響く。

「いいから、肩まで浸かれ、風邪ひいちまうぞ」

さっきからやけに丁寧に扱われて、それはそれで不満も無いのだけれど、どうにも釈然としない気分だった。

あんな事をされて、非常に腹が立つし悔しいのだが、これまでと違って何故か逃げ出す気が起こらない。

きっと体がだるいのと、認めたく無いけれど、数回の行為がこいつとの関係を慣らしてしまったせいだろうと自身に結論付けた。

温かな湯に浸っていると、甲太郎が背後に回りこんで抱きしめてきた。

膝の間に納められるような格好になって、何度も首筋や肩にキスしながら両手が優しく体中をまさぐる。

「お、おいバカ、さすがにここではするなよ?この後人が使うんだから」

「俺には関係ない」

「関係あるだろ、公共倫理だぞ」

「お前の口からそんな言葉が聞けるなんてな、なら、公共倫理だ、校内の備品を盗るな」

「ウッ」

日頃物資調達と称しておこなっている行為をこんな形で責められて、ぐうの音も出ない。

甲太郎は笑っていた。

「晃」

甘い囁き声。

耳たぶを軽く噛みながら、掌が乳房を優しく包み込んで、愛撫する。

局部に触れようとしたもう片方の手を何とか制止しようと試みたのだけれど、結局指先はするりと内側に入り込んでしまった。

かき混ぜられるたびに湯が体内に入り込んでくるので、晃は少し困った顔をしながらおとなしく胸にもたれかかっていた。

抵抗するのを諦めたわけでなく、先ほどの一戦ですっかり脱力していたから、暴れるだけの元気がどこにも残っていないせいだ。

決して、決して、懐柔されたわけじゃない。ましてや。

(き、気持ちいいだなんて、絶対思ってないぞ、俺はっ)

強がっているのが自分でも明らかで、かえって哀愁を誘う。

晃が溜息をついたのを、勘違いした甲太郎が頬にキスして訪ねた。

「疲れたのか?」

「ン、お前があまりに変態で、俺は逃げ出す力も残ってない」

「そいつは好都合だ」

笑う横顔を睨みつけると、もう一度キスされた。

「晃」

耳障りのいい声に、甘い快楽がセットになって体の中を駆け巡る。

晃はすっと目を閉じていた。

触れ合う温もりと、波立っている湯船の水音だけが辺りに響いていた。

 

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