気づくと彼の事を考えている。

白羽天人、今まで知り得ないタイプの人物―――

一夜明けて、前日に交わした約束通り、護衛をつけて家まで送らせたものの、予見していた結果に終わったと職員から報告を受けて、次の手を配した。

使える駒なら有意義に用いなければ、現状、手駒は多いに越したことはない。

現実を知らしめることで新たな布石を打ったつもりでいたけれど、予想外の受け答えをする者がいた。

―――白羽天人だ。

家に帰れず、近親者の安否すら不明、それ以前に今や自身の命の保障すらない。

志島を始めとした他3名の言動はほぼ予測通り、今後の動向は個人のポテンシャル次第と見守るつもりでいた。

しかし、唯一、白羽天人だけは、極めて冷静に状況を受け入れ、自ら動く意志を示して見せた。

つまり彼にはまだ余裕があるという証明にほかならない。

多く人が死にこれまでの日常が崩壊した極限状態において、一庶民として暮らしていただろう彼が、だ。

訓練を受けたジプス局員ですら慄く者がいるというのに、まさかの反応に息を呑んだ。

彼は何者だろう。

どれ程の潜在能力を秘めているか興味が沸いた、いや、積極的に知りたいと欲している。

監禁の件に関しても、あえて事実をありのまま話し、反応を見ようと思ったが、逆に器を見せ付けられた。

毛色が違う、彼は、白羽天人だけは、その辺の民間人の尺度では測れない。

凪いだ海を思わせる深く青い瞳。

手の内を読ませない、強い意志と知性に満ちた眼差し。

(何故?)

知りたい。

(何故だ)

彼を知りたい。

人相手にこれほど強い興味を抱いたことなどない。

―――故に、興奮している。

(興奮?)

そう、興奮だ。

込上げる期待感、自分と似た気配、気になって仕方ない。

天人、と、声に出して名を呼んでみた。

口当りのいい音に酔い、自身が笑んでいることに、いまだ大和は気付かずにいた。

 

 気づくと彼の事を考えている。

峰津院大和、今まで会ったことの無いタイプの人物―――

翌朝、大和を見て思ったのは、やけに落ち着いているなという若干の違和感と、それに伴う興味だった。

まるで知っていたかのような態度と余裕、しかし、それは当然と思い直す。

政府の人間なら多く情報を得ているだろうし、そこからある程度の推測も、予測も、そして、対策だって講じてあるに違いない。

何より17で政府機関の局長職なんて勤めてるような奴なんだから、俺なんかじゃ到底計り知れないだろう。

そして思っていた通り、家には帰れなかったと大地に聞かされて、腹を括った。

どのみち決めなければならなかった覚悟だ、待っても縋ってみても、誰も助けてくれない。

自力でどうにかするしかないと天人に意図せず教えたのは、仕事が忙しく不在の多い両親だった。

それにしても、と、天人は改めて思う。

峰津院大和は凄い。

彼の言葉には有無を言わせない説得力があり、考え方は常に合理的で、文句のつけ様がない。

大地辺りは情に欠ける言動が気に食わないみたいだけれど、そんなもの出会ったばかりの他人に要求するなんてあつかましい、それに、向こうも当然警戒しているだろうから、そもそもが無茶だ。

すぐいい顔をするような奴は信用が置けないし、他人の善意なんて当てにしていたら、いずれ立ち行かなくなるだろう。

今、必要なものは、正確な情報と生き延びる手段、それらを大和は惜しげなく与えてくれた。

出会った当初の態度はともかく、その後の監禁の理由や、今の状況に関しても、彼の思考は常に明快で、含みはあっても誠実と呼べるほど言動を偽らない。

こちらとしても、初対面の彼から無償の奉仕を受けていたら色々と気兼ねしていただろう、しかし、ギブアンドテイクを求められる現状が、天人としてはやり易く、寧ろありがたい。

少なくとも悪い奴ではないのだろう。

同行を求められて赴いた大阪の地で、再度現れたメラクとかいう今度は形状の違う奇妙な敵を倒した後、峰津院大和という人物に関して、天人はそのように結論付けた。

もし見込み違いだったとしても、利害が一致する限りは大和を受け入れるべきだ。

―――帰りの新幹線内で、トンネル内の暗闇ばかり続く窓に映った自分の姿を眺めながら、ふと思う。

今頃、大和は大阪で何をしているのだろう。

あちらはジプスの本局という話だから、東京より色々忙しくしているかもしれない。

(時間的には夕食時だよな)

天人の腹が応えてキュウと鳴いた。

そういえば緋那子を本局に送り届けて、その時僅かに非常食を口にして以来、何も食べていない。

戻ったら迫さんにお願いしてみよう、そんな風に考える自分に苦笑いする。

生き残るため、使えるものは遠慮なく使う、大和ならそういった考えを肯定するだろう。

(豪胆というか、強引だよな、あと、凄い自信家だ)

目を閉じて姿を思い浮かべた天人の口元に、知らず笑みが浮かぶ。

大和の事を考えていると、自分まで気が大きくなっていくようだ。

(俺も、アイツみたいになりたい)

でも年下なんだよなと改めて吐息が零れた。

今は年齢など大した意味を持たない。

できることをやるんだ―――大和のように。

決意して握り締めた手の中に、携帯電話の硬質な感触があった。

 

 

我が家のスタートラインは、大和→興味、天人→憧れっていった感じ。

三日目のお話もありますが、それは裏指定なのネッ!

でも実はここからも飛べます…一応未成年禁止って事でヨロシクなのネ〜