(す、凄い目にあった)

浴室で体を洗うついでに行われたアレコレ。

明らかに―――これまでしたことのない行為。

(これが外国暮らしの成果?)

若干イラッとする。

向こうで女を作っていたような気配はなかったけれど、嘘の上手な従兄の事だ、油断できない。

直哉の部屋でベッドに腰掛けて髪を乾かされながら、それとなく尋ねてみると、即答で違うと返された。

「くだらん、女など、生殖以外に用はない」

「それって凄い差別発言」

「フン、更に言えば俺は子供を必要としていないからな、よって性という意味での女は不要だ、使える駒であれば性別に拘る必要など無いだろう、だからこそ差別も無い」

相変わらずの合理主義に思わず閉口してしまう。

間を置いて、和哉は思いつきで尋ねてみた。

「じゃあ、そういう意味での俺の価値は?」

カチンとドライヤーが止まる。

髪の乾き具合を確認するようにくしゃくしゃと撫で回して、呆れたような笑い声が聞こえた。

「さあな」

見上げた和哉は立ち上がりながら直哉と唇を重ね合わせる。

そうしてベッドに腰を下ろした直哉の背後に回り、受け取ったドライヤーのスイッチを入れた。

「お前こそどうなんだ」

「え?」

「好きな女はいないのか、そういう年頃だろう」

「俺は別に」

「あの少女とはどうなんだ、確か、谷川とかいう」

「ユズは友達だよ、それに俺、女子の友達少ないし、まだよくわからないよ」

「フン、贅沢者め、えり好みしていられるうちが花だぞ」

「その言葉、ソックリそのままナオヤに返す」

「俺を認めているというわけだな」

「言ってろよ、もうッ」

直哉の髪は絹糸のように細く、濡れていてもとても手触りがいい。

自分はどちらかといえば猫ッ毛だから、ちゃんと乾かさないと翌朝が大変だ。

あらかた乾いた事を確認してスイッチを切ると、ベッドから降りてドライヤーのコンセントを引き抜き、机の上にまとめて置いた。

―――浴室から戻って、まだ体の奥が熱い。

来い、と直哉がベッドに腰掛けたままで呼ぶ。

「改めて久々に楽しもうじゃないか、幸い、気遣う必要もない」

和哉は隣に座って、促されるまま胸元に凭れかかった。

「なんか嬉しそうだな」

「クク、当然だろう、夢にまで見たお前の体だ」

「エロい言い方しないでよ、そういうんじゃないんでしょ?」

「ああ、勿論そうだ、さて、離れていた一年半分、時間をかけてタップリと可愛がってやろう」

「お手柔らかに頼みます」

「可愛い従弟を前にしてどれほどの自制心を保てるか些か不安だが、まあ、努力はしよう」

「ん、その言い方がやらしいんだってば」

会話の合間にゆっくりベッドに押し倒されて、唇を重ねられる。

見上げた直哉が随分楽しげだったから、何だかくすぐったくて、和哉もつい声を出して笑ってしまった。

(これだ)

体温、重さ、息遣い―――心臓の音も、何もかも懐かしい。

(ずっと待ってたんだ、俺)

抱きしめられて、改めて感慨深く思う。

(おかえり、ナオヤ)

唇が肌に触れる。

(おかえりなさい)

そっと抱きしめると、応えるように優しく名前を呼ばれた。

たったそれだけで嬉しくて、何度も唇を重ねあう。

雨音と時計の針が進む音を遠く聞きながら、灯されたままの照明の下で、二人は固く抱きしめあい、お互いの温もりを感じあっていた。

 

―――長い時間、体中を愛撫され続けて。

「あッ」

和哉が一度目の絶頂を迎えた後。

(え?)

くぷ、くぷと出入りを続ける直哉の指が、一本増え、更にもう一本、和哉の後ろをグチュグチュとかき混ぜたり奥を擦ったりを繰り返す。

いつもはその合間に再び性器への愛撫が施されて、和哉はビクビクと体を震わせながら二度目の絶頂を噛み締めている、筈なのだが。

(今日は触ってくれない)

一度精を放ってから、和哉の雄は放置されている。

代わりに直哉は執拗に菊座を弄り、丹念に解し続けている。

ローションも沢山かけられた。

もういい、と何度伝えても、直哉は行為をやめようとしなかった。

「な、ナオヤ、そこ、もう、いいからッ」

「ダメだ」

「何で?」

「―――今に分かる」

その繰り返し。

合間に口付けされて、胸の辺りをまさぐられ、乳首を吸い上げ、指でしこられるたび、体中の力が抜けていく。

(電気、ちょっと眩しい)

乗り上げて上気している直哉の顔もよく見える。

(何か、エロい)

いやらしい事をしている筈はないけれど。

(も、そろそろ、限界)

焦らされて、疼いてしまって仕方ない。

早くどうにかして欲しいと無意識に腰を動かしていた。

仕草に気づいた直哉の唇に淡い笑みが滲む。

「―――そろそろいいだろう」

「え?」

何が、と尋ねようとした時だった。

直哉がズルリと指を引き抜き、代わりに―――熱を帯びた固い物体で和哉の後ろを圧迫してくる。

なんだろうと窺おうとした途端、それがぐぷ、と内側に入り込んできだ。

「あうッ」

咄嗟に仰け反る和哉の両腕を掴んで、直哉はそのまま質量をズブズブと押し込めてくる。

「な、ナオヤ、嫌だ、痛ッ」

「そんなはずはない」

「苦しい、よッ」

「すぐ慣れる、ゆっくり息を吐きながら、体の力を抜け」

「うぐぅ、そ、んな、の、無理!んうッ」

呼吸の合間を窺いながら、焼けた鉄棒の様な何かは少しずつ和哉の中に収められていく。

不意に動きが止まって、屹立していた雄を前触れなく愛撫されたものだから、思わずビクリと震えた弾みで一気に奥まで突き上げられた。

息苦しい圧迫感とともに、下肢に密着している肌の感触を覚える。

どうにか起き上がって窺うと、骨ばった手の中に収められた和哉の男性器の向こう、大きく広げた両足の間に、直哉の腰がピッタリと押し付けられていて、下腹を圧迫するように乗り上げていた。

「な、何?」

顔を上げた和哉に、直哉が深々と口付けた。

唇を吸い上げながら、腹の中の質量がゆっくりと内側を広げるように動き始める。

太くて、熱くて、大きく、硬い何かが、まるで形を馴染ませるように、ジワジワと和哉の中を解していく。

飽和した思考は既に停止状態で、ただ必死に直哉にしがみ付く和哉をあやすように、軽く出入りを繰り返したあと、様子を窺いながらパンパンと音を立てて突き上げられた。

動作は浅くなり、深くなり、奥を穿ったままかき混ぜてみたり、引き抜いて一気に突き上げたりと、和哉を様々に攻め立てる。

全身を瘧の様に震わせながら、和哉はただ鳴き声を上げる以外何も出来なくなっていた。

抗えない。

熱くて、苦しくて、何がどうなっているかわけも分からず、ただひたすら―――気持ちいい。

無意識に和哉からもねだるように腰を動かしていた。

兄は弟の痴態に瞳を眇めて、発育中のアンバランスな体を両腕に抱きしめると、更に深い部分をより激しく侵していく。

「アッ、やッ、だ、ダメ、もう、だめッ」

「何がダメなんだ、和哉」

「もう、もうダメ、ダッ、めッ、やッ、ハッ、あッ、あンッ、あううっ」

「和哉、ちゃんと言わないと、わからないだろう?」

「んあッ、ああッ、お、奥、ダメ、ナオヤッ、ああッ、なおやぁ!」

粘膜を突き上げる怒張の根元が菊座に当たるたび、擦れあう境目から飛沫が散った。

直哉に抱きかかえられるような格好で和哉は涙交じりの嬌声を上げる。

雨音は一層強くなり、時計の針は既に深夜を指し示していた。

室内照明に煌々と照らし出されたベッドの上、スプリングを軋ませて、火照った肌が擦れ合い、上気した体が何度も跳ね、吐息が絡み合う。

和哉と、そして直哉も、その時が迫りつつあると感じていた。

貪られるままに唇を欲しながら、和哉は夢中で兄の体に腕を回し、両足を絡めてより深い部分に導こうとする。

「なおやぁ、なおやァ」

目尻に滲む涙を舐め取られた。

「お前の涙は甘いな、和哉」

囁く声すら官能的で、心からブルリと震えてしまう。

「も、もう、オレ!」

「いいぞ、イケ、俺もそろそろッ、くッ」

一際大きく突き上げられて。

「アアアッ」

しがみ付くと同時に、和哉の腹の奥に―――直哉から、熱を孕んだ情欲の証が流れ込んできた。

つられたように、和哉も、重なり合った肌の合間で歓喜を勢い良く吐き出す。

汗ばんだ胸元に顔を埋めたら、髪に触れる直哉の吐息と、慣れ親しんだ体温、そして、直哉の匂いを感じて、たまらず両腕にギュッと力を篭める。

和哉の髪を、フフ、と柔らかな笑い声が掠めて、耳朶をくすぐり、唇で触れられた。

何か、ズルリと引き抜かれる。

赤く腫れた菊座から、同時にゴポリと白濁した液体が流れ出した。

「あっ」

思わず声を挙げた、和哉の顎を指先で持ち上げて、直哉の唇と唇が重ねられる。

啄ばむような口付けの後で、再びグッタリと胸元に寄り添うと、何度も優しく髪を撫でられた。

「―――ナオヤぁ」

「ん?」

どこか満足気な声が答える。

少し嬉しくて、和哉はクスクスと笑った。

「何か、凄く気持ち良かった、俺、こんなの初めて」

「そうか、フフ、満足できたか?」

「ん、ナオヤ、好き」

伸び上がって和哉から唇を合わせる。

そのまま体重を預けるように抱きついてくる弟を、兄はしっかり受け止めてくれた。

後ろ向きに倒れながら、まだ口付けをねだり続ける和哉に、直哉はクツクツと笑い声を立てて、華奢な背中をゆっくり撫でると、他の部分にも指先で味わうようにして触れていく。

雨音に紛れるようにして、睦み会う二人と共に、夜はしっとりと深けていった。

 

 

和哉はこの期に及んで未だに何されたのかよく分かってません、これも直哉の教育の賜物。