一月某日。

高校生活最後の学期が幕を開けた。

長いばかりでまるで面白くもない校長の話など聞く気もしなかったので、蓬莱寺は新学期初めの合同HRをすっぽかしてのんびり登校した。

「もう、蓬莱寺くんったら」

呆れるマリア教諭と美里に苦笑いを浮かべられ、遠野からは早速スクープのネタにすると脅され、何だかんだで騒ぎながらも変わらぬ日常が始まろうとしていた。

ただ―――光の姿だけが、まだどこにも見つけられない。

LHRが始まって、通知表の回収や、提出物の起源などの説明を受けて、マリアが高校最後の日々を有意義に過ごしましょうと話し終わっても現れなかった。

クラスメイトたちが受験や残り僅かの日々を惜しむような話題で盛り上がっている中、机の脇に立った姿を見上げて、蓬莱寺は苦笑いを浮かべる。

「どうした、美里」

「ねえ、京一君」

「ん?」

「光のこと、何か知らない?」

―――やはり、それか。

不安げな様子に申し訳ないと思いながら、けれどこちらも伝えられる事など何もない。

「悪い、俺も連絡つかねえんだ」

素直に答えると、美里は案の定落胆の色を露にした。

「そう」

「美里もだったのか」

「ええ、千葉の実家にも連絡させていただいたのだけれど、取り次げないと言われてしまって」

「この調子じゃ俺等全員、光に関して何にも知らないみたいだな」

「ううん、待って」

首を振り、美里は呟く。

「壬生君なら」

蓬莱寺の胸がドキンと一つ高鳴った。

「もしかしたら、知っているかもしれない、だって、光の一番大切な人だもの」

「けど、よお」

「ねえ、京一君、お願い」

美里は不意に、僅かにかがんで、机の上に投げ出していた蓬莱寺の手をとった。

クラスメイトの男子が数名、その様子を驚いた顔をして見ている。

「何とか壬生君と連絡を取ってもらえないかしら」

「お、おい、美里、ちょっと待てよ」

「私にはまるで方法が無いし、蓬莱寺君ならきっと壬生君の居場所が見つけられると思うの、ね?」

「けど、手がないのは俺も同じだぜ、あいつの携帯番号も、ポケベルの番号も知らないし、住処だって訊いた事もねえ、精々拳武に行くくらいしか手が」

「だったら、拳武館へ行ってみて」

「お前なあ」

「お願い、京一君、貴方にしか頼めない事なの」

瞳を潤ませて、心底困窮した表情で哀願してくる―――真神一の美少女を袖にしてしまうほど、蓬莱寺は残念ながら不義理にも冷徹にもできていなかった。

あまつさえ、共に死線を潜り抜けた仲間の頼みだ。

そして、光のことは、自身もかなり気がかりに思っている

暫く考え込んで、やがて深いため息と共に、蓬莱寺の首は縦に振られていた。

「有難う」

手をギュッと握り締めると、美里はこれから生徒会の用事なのだと、すぐさま踵を返して教室を出て行ってしまった。

残された蓬莱寺はお門違いの嫉妬の眼差しを鬱陶しげに振り払いながら、もう一度ため息を漏らす。

「何だって俺が、あんな奴にアポ取んなきゃなんねえんだっつうの」

手ぶらで訪れた教室を、やはり手ぶらでぶらりと出て、廊下を歩いた。

生徒の群れをかき分けて、昇降口から外に出ると、北風が頬を撫でていく。

「さっぶ!」

ふと見上げた空が鉛色をして今にも落ちてきそうだから、雪が降るのかと、小さく呟いてみた。

ジャケットにマフラーの防寒具を着込んで、昇降口に近づくと、出て行く女生徒たちが門柱の影を振り返っては頬を赤らめてなにやらひそひそと話しながら歩いていく。

(まさか)

蓬莱寺は思わず駆け出していた。

そこにいるのが、光であったら―――

(あいつ、連絡もしねえで、一発くらい小突いとかねえとこっちの気が収まらねえ)

ぱっと飛び出して、振り返った視線の先、そこに。

「―――よう」

片手をひょいと挙げる、白いコートを着込んだ、白い学ランの大男。

「村雨」

「おいおい、そんな顔すんなよ、悪かったな、美人のねえちゃんじゃなくて」

舌打ちまで漏らす蓬莱寺に、村雨は苦笑いを浮かべる。

「まあ、機嫌直せって、な?」

「新学期早々むさい髭面見せられたんじゃウンザリするぜ、あークソ、萎えた」

「そんなにセンセじゃなくて残念か」

不意に動作の止まった様子を見て、軽く失笑された。

蓬莱寺は直後に頬を染めて、そんなんじゃねえよと口を尖らせながら反論する。

「まあ、まあ、落ち着け、冗談はともかく、先生は新学期早々不登校らしいな」

「ああ、まあ、な」

「蓬莱寺、その様子じゃお前も先生と連絡も取れてないな」

「―――おう」

「美里の嬢ちゃんはどうだ」

「同じだ、あいつも心配していた」

「なるほどな、案の定のな展開ってわけだ」

ポツリと漏らした村雨の一言に、蓬莱寺は怪訝な顔をする。

「何だと」

村雨は、その様子を見て、急に口元をギュッと引き縛った。

こうしていると案外造詣の整った、彫の深い、いい顔をしている事に気付かされる。

女生徒達が頬を染めていた理由に思い至って、けれどそんな事どうだっていいじゃねえかと、蓬莱寺はその眼を睨み返すように向かい合った。

「今のは、どういう意味だ、村雨」

「―――詳しく訊きたいなら、とりあえず今すぐ俺に付き合え」

「どこに行くつもりだ」

「如月骨董品店、壬生も恐らくもう来ているはずだぜ」

唐突に頼まれごとに辿り付いて、驚く蓬莱寺に村雨は自身の伝手と如月の情報網のおかげだと、口角を僅かに吊り上げた。

けれど、眼だけは微塵も笑っていない。

「時間が無い、腹が決まったんならとっとと行くぜ」

訊きたいことはまだ多くあったけれど、今は村雨の提案に乗るしかなかった。

無言で歩き出す蓬莱寺を見て、村雨も隣を歩き始める。

 

如月の店は、真神からそう遠くない。

 

道すがら一言も話さず、古びたすりガラスの扉の前に立って、掘り込み式の引き手に手をかけて蓬莱寺は入り口を開いた。

ガラガラと音を立てながら、それでも手入れの行き届いた扉は使えたりせずすんなりとスライドしていく。

相変わらず薄暗い店内の、奥に佇む漆黒の影が物音に気付いて振り返る。

「壬生」

「やあ」

かすかに頭を下げた、壬生は少しやつれているようだった。

店内に入ってきた村雨の姿も見つけて、お久しぶりですと再び会釈をする。

「おう」

村雨は蓬莱寺にしたのと同じように片手を挙げて、その手で後ろ手に扉を閉めた。

すると、帳面台の奥から足音が近づいてくる。

「揃ったか」

姿を見せたのは、店主の如月だった。

相変わらず和服を着込んで、羽織姿はまるで時代錯誤だ。

骨董品店内部だけ時間が止まっているような錯覚を、蓬莱寺はこの姿を見るたびに感じていた。

今も、そんな気分で如月を見ていると、帳面台の前に正座して、さて、と両手が開かれたままの帳簿をしまう。

「如月、一体何のパーティーだ」

「フッ、冗談としてはまあまあだな、蓬莱寺君」

「悪かったな」

鼻を鳴らす蓬莱寺を一瞥して、壬生が、如月さん、と振り返る。

「僕からも訊きたい、何故、僕等はここへ集められたんだ」

「君がそれを尋ねるのか、壬生、すでに察しはついていると見込んでいたんだが」

壬生は口をつぐんだ。

すると、村雨が帽子を脱ぎながら、あー、と声を上げて彼等をぐるりと見回していた。

「そんじゃま、始めるとするか」

「村雨」

「とりあえずな、お前等を集めようって言い出したのは、俺だ」

蓬莱寺と壬生は村雨を振り返る。

「のっぴきならない状況なんでな、最後の賭けに、出ることにした」

「何だと」

「あのな」

ちょっと待てと、如月が遮った。

「何だ」

「村雨、お前、本当に―――言うつもりなのか?」

「ああ」

「僕は正直、賛同しかねる」

「お前の心配事なんて知った事か、俺は、俺のしたいようにやらせてもらうだけだ」

「けれどそれでは、君自身の務めにも反する事になるだろう、それに、僕等はあくまで助力するだけの傍観者だ、真実を知る事が幸福だとも思えない」

「知らなきゃ幸せとも限らねえだろ、どのみち俺は御門の野郎から聞いちまったからな、なら、こいつ等にも話しておくのが筋ってもんだぜ」

「その秘密の開示の場に、僕の店か」

「いい加減腹括って共犯になれよ、如月、お前だって先生のことは、嫌いじゃねえんだろ?」

「―――光?」

壬生が即座に瞳の奥を光らせる。

蓬莱寺も同様の反応だった。

「おい、村雨、それと、如月、てめえら、一体何の話をしてやがる」

帳面台の上に身を乗り出した蓬莱寺を、鬱陶しげに一瞥した如月は、そのまま顔を背けて嘆息する。

「村雨、責任はお前が取れよ、僕はあくまで唆されて、片棒を担がされただけ、だ」

「ヘッ、上出来だぜ」

「オイ、如月、村雨!」

「まあ落ち着けよ蓬莱寺」

村雨は、上がりかまちにどっかと腰掛けて、蓬莱寺と、壬生を順に見た。

「いいか、お前等、一回しか言わねえし、質問にも答えられねえ、俺は、俺の知った事実を伝えるだけだ、後のことは自分で決めろ」

「能書きはいい、早く話してもらえないかな」

焦れた様子の壬生が、眼光鋭く村雨を睨みつける。

村雨は、再び目深に帽子を被りなおすと、僅かに押し黙り、それから低い声で語り始めた。

「あのな」

 

―――光が、消えてしまう、と。

 

蓬莱寺は呆然と立ち尽くしていた。

壬生も、何事か理解できない表情をして、村雨を見続けている。

 

「俺の話は嘘でも冗談でもねえ、全部真実だ」

 

―――務めを終えた御剣の剣は、さほどの時を置かず消滅する定めにある。

 

「な、んだ、と」

「俺の雇い主が今朝教えてくれた、俺も、今日まで知らなかったんだがな」

「どういうことなんだ、村雨さん」

 

―――御剣の剣は、人に非ず、其は契なり

 

「契?」

「遙か昔、火の国の王たる姫巫女在りて、地を覆う混沌を嘆きし巫女、祈る事七日七晩、願いを聞き届けし龍より一振りの剣賜う」

「如月さん」

「其は人代を取りて、なれど人に非ず、其は龍の宝剣なり、地、乱れし場所に赴きて治を授ける、混沌を分かち、争いを呼ぶ剣」

「それが、光だって言うのか?」

「蓬莱寺君、それに、壬生、君たちには辛い現実かもしれない」

「まさか、光は―――」

 

「そうだ」

 

村雨の眼が痛々しい色を湛えて帽子のつばからそっと覗く。

 

「厳密に言うと、光は僕等と同じ『人』じゃない」

 

まるで現実味の無い如月の言葉に、蓬莱寺と壬生はただ唖然とするしかなかった。

こんなセリフを言われて、一般的な反応ならば笑って流すのだろうけれど、過去を思い返す限りとても―――冗談で済ませられない、彼等の言葉からは信じるに値するだけの真剣みを感じる。

蓬莱寺は如月を見て、それから村雨を窺った。

どちらも謀ろうとしているわけでない事は、その表情や気配で一目瞭然だった。

壬生も、同じように彼等を交互に見て、息を呑むと、不意に体が震えていることに気が付いた。

 

「蓬莱寺君、壬生、よく聞いて欲しい、光は、龍脈の活性化と共に御剣の女が子として顕現させる、神の一種だ」

「神、って」

「他に適当な言葉が見当たらないから、仮定義させてもらう、太古の契りを今に伝える龍と人との楔、御剣の一族が、その時の時代を生きる人のため、節目ごとに訪れる気脈の乱れを制御するために生み出す、血と肉を持った人代だ」

「な、バカな」

呟いて、そして壬生は直後に眼を剥いて叫ぶ。

「そんな話などあるものか!光は人だ、僕の愛している人だッ」

「―――君の混乱は、想像に難くなかったけれどね」

現実を受け入れろ、と、如月の言葉に、壬生は振り上げた拳を下す。

そうして震える腕を、片手でぎゅっと握り締めていた。

蓬莱寺はまだ呆けたままだ。

(光が、神様?)

冗談だろうと思う。

4月に転校してきた光は、見たこともないほど美形という以外は、特に目立った特長も無い、ちょっと世間知らずのお人よしで、異様に戦闘能力が高い事と、治癒が早い事は、体質的なものだと思っていた。

(俺は、バカか)

そうして不意に思い当たってしまった。

記憶に残る彼の全てが、この真実に繋がっていた事を。

壬生との事、六門封神の事、柳生との因縁や、表裏とも言える影生の存在、およそ常人とは思えない胆力、高すぎる戦闘力と、圧倒的な回復力、時折彼の身体を包み込む、黄金の気配―――

あれほど、現実離れした美貌とカリスマを備えていたのも、彼が神であったから?

(俺があいつに惹かれたのも、そのせいだっていうのか?)

蓬莱寺は黙り込み、俯いた。

静まり返った店内に、村雨の声が淡々と響く。

「お前等の胸ン中はどうあれ、事実は事実だ、どうしたって変えられるもんじゃねえ、受け入れるかどうかはお前等の勝手だがな」

「―――朋恵ちゃんは?」

村雨は答えない。

「彼女は人だよ」

代わりに如月が答えた。

「守姫は剣に仕える姫だけをそう呼ぶ、他の御剣の女性は織姫だ、その名の通り人と龍の鎖を紡ぎ続ける、来るべき日の契りに備えて」

彼女たちは全員菩薩眼なんだよ。

如月の一言に、蓬莱寺はまじまじとその眼を見詰めていた。

「マジかよ」

「ああ」

「美里と同じ力が、あるってのか?」

「多少の強弱はあるけれどな、基本的に御剣には菩薩眼の女性しか生まれない、男子が生まれるとき、それは例外なく剣だ、人でなく、だから生殖機能を持たないし、そもそも性別自体存在しない、彼等は戦うためだけに生まれ、役目を果たせば源流へ還る定めだ」

「どこに?」

「世界を廻る、大いなる気脈の流れ、そのものに」

「如月さん」

壬生が呼びかける。

「―――何だ」

「貴方は、そのことをずっと知っていたんですか?」

「ああ」

途端瞳の奥に燃え上がった憎悪の炎は、直後に消滅して、壬生は両腕をだらりと下げた。

痛々しく瞳を眇めた如月は、そのまま俯きがちにため息を漏らす。

「まあ、君や、蓬莱寺君にはもっと早くに話しておくべきだったのかもしれない、すまなかった」

「―――いえ、如月さんが黙っていたのは、恐らく御剣に禁じられていたからでしょう?」

「そうだ」

「ならば、詮無きことです、如月の家は御剣とは古い付き合いだと聞いています、誠実でなければ信ずるに値しない、如月さんは責務に忠実であっただけだ」

沈み込んだ雰囲気の中、不意に沈黙を破って、蓬莱寺がハッとした様子で声を上げた。

「そんな事より、如月、村雨ッ」

鈍い動作で振り返る二人を交互に睨みつけて、切羽詰った表情が拳を握り締める。

「それじゃ―――姫は、もう消えちまったっていうのか?」

息を飲む音がした。

見る間に青ざめて震えだした壬生を一瞥して、村雨が首を横に振る。

「いや、まだだ」

「光は千葉の邸宅にいる」

如月は帳面台の下から何か取り上げて、立ち上がった。

広げたそれは和装用の外套のようだった。

羽織を脱いで着物の上からはおり、かまちの下に揃えてあった下駄を履く。

「行くなら、急ごう、剣の消滅がいつなのか、それは守姫と剣自身しか知らないからね」

「如月さん」

「そうだな」

村雨も腰を上げて、帽子のつばをくいと持ち上げる。

「どうすんだ、蓬莱寺、壬生、そういうわけで俺等は先生の様子を見に行くつもりなんだが」

「様子見、なるほど―――だがお前は違うだろう?村雨」

「まあ、剣が消えれば守姫の余命は一年ちょっとだって話だからな、さすがの俺ものんびり構えていられねえってな」

「なッ」

再び瞠目する蓬莱寺と壬生に、村雨は照れ笑いの様な表情を浮かべて見せる。

「ようやく見つけたんだ、あんないい女、みすみす逃がしたくない」

「村雨、お前」

「守姫は、剣の消滅と共に全ての力を失う、そしてこれまで抑えられてきた災厄の全てを被るんだ、人と龍の契りがあるから、それでも暫くは生きていられるけれど、すぐにつがって子を成さなければ御剣の紡いできた織糸はそこで断ち切れてしまう、そして、子を産むのと殆ど同時に、かつての守姫たちは例外なく絶命している」

「そんな、バカな」

「ああ、まったくバカげた話さ、そのための種付けの相手が生まれたときから決まっているんだと、あのお姫さんにもだ、クソ、ふざけるんじゃねえ、あれは、そんな安っぽい女じゃねえ」

「人の世の繁栄と存続のためだけに生きてきた一族なんだよ、御剣という血脈は」

「使い捨てにされるには、惜しい奴らだと思わねえか?」

なあ、蓬莱寺と、村雨が覗き込んでくる。

「お前、そんな話を聞いて、黙ってハイそうですかって、言えるか?」

「君はどうなんだ、壬生」

振り返った如月の視線の先で、壬生は影のように佇んでいる。

「光のこと、このままにしてしまって構わないのか?」

「ふざけんじゃねえ!」

蓬莱寺が帳面台を殴りつけた。

「言えるわけない、そんな話、言えるわけねえだろうが!―――姫は、俺の、俺達の大切な仲間なんだぜ、人だとかそうじゃないとか、運命とか、剣の定めだとか、そんなもん関係ねえ、死ぬだ?消える?ふざけんじゃねえ、黙ってなんて、いられるわけないッ」

「―――僕も蓬莱寺君と同じ気持ちです」

怒気を孕んだ抑揚の無い声で、壬生も静かに心情を吐露する。

「光は、消えない、消させない、そんな事は僕が許さない、絶対に」

「朋恵ちゃんのこともあるしな、お前の言うとおりだぜ、村雨、どこの馬の骨ともわからねえ野郎と一発ヤッて子供作って、そんで死んじまうなんて、そんなクソみたいな話があるかッ」

「行きましょう、今すぐ、千葉の邸宅へ」

「おう!」

片手に掴んだ馴染みの感触―――紫布に包まれた、木刀を振りかざして、まるでいつかの再現のように蓬莱寺が駆け出していた。

その後を壬生が、そして、顔を見合わせて笑いあい、村雨、如月が続く。

しんがりの如月はちゃんと店に施錠をして、下駄をカラコロと響かせて走った。

そろそろ夕闇が近づきつつある。

今にも降り出しそうな曇天の下、千葉県に雪が降り出していると、電光掲示板が伝えていた。

 

(続きへ)