天井の木目を眺めながら考える。

(あの時、どうして花村はあんなことを言ったんだろう)

『違う』

『そんなの、嘘だろ』

―――言葉がグルグル、グルグルと脳裏を回り続けている。

 

(嘘なんかじゃないさ)

朋也は考える。

(俺は本当に、もう独りはそんなに辛くないんだ)

無理をしているわけでも、強がっているわけでもない、朋也は独りの時間の過ごし方を覚えた。

それは必然だったように思う。

父も母も仕事で忙しく、家に手伝いに来てくれる人も四六時中一緒というわけにはいかなかった。

それだって、朋也が中学二年の誕生日を迎えると同時に両親が契約を切り、朋也は真実、独りで過ごさなければならなくなった。

色々な感情を吐き出す場所も、受け止めてくれる人もいなくて、そのうち、そういったものを自分の中で消化する方法を覚えた。

友達はたくさんいたけれど、心の深い所まで理解してくれる相手には多分一生かかっても巡り逢えない予感があった。

(だから俺は、独りでも居られる様になったんだ)

孤独を厭わない朋也の周りにはいつの頃からか人が集まってくるようになった。

彼らは皆等しく鬱屈した悩みを抱えていて、勝手に憂いを語り、勝手に乗り越えて、そしてこう言う。

「お前も自分を頼りにしろ」と。

(そんなもの、俺には必要ない)

同じ様に考えるな。

自己完結しておいて、知ったような口ぶりで何を言う。

(どうせ)

上辺だけの理解のくせに。

 

(―――花村は、多分、あの先輩の事を乗り越えたんだろうな)

 

河原で泣き出した姿を見て、朋也の胸も随分痛んだ。

高台で笑う姿に、漸く抜け出せたんだなと素直に嬉しかった。

それで花村陽介は完結するものと思っていた。

お決まりのパターン。

結局どこまでいっても俺は傍観者でしかない。

(でもアイツは―――)

帰りのバスの車内。

言いかけた言葉を詰まらせて、神妙な面持ちで項垂れていた横顔。

朋也は困惑して、降車してからとにかくその場を取り繕うとしたら、突然腕を引かれた。

 

『違う』

『そんなの嘘だろ』

 

陽介の声が、瞳が―――心を乱す。

『違う』

(違わない)

『嘘だろ』

(嘘じゃない)

俺は何を期待しようとしている?

 

(嘘じゃない、いらないんだ、本当に、もう欲しがるのはやめたんだから―――)

 

八十稲羽を訪れてから調子の狂うことばかりだ。

ため息を漏らした朋也の視界に、そろそろ深夜を回る時計の針が見えた。

(寝よう)

ずっと考え込んでいたから、いい加減疲れてしまった。

(こういうときはさっさと寝るに限る)

明日になれば胸のわだかまりもきっと少しは消化されているだろう。

(花村)

そっと瞼を閉じる。

(今頃、どうしてるかな―――)

 

その夜、朋也は夢に陽介の姿を見たような気がした。

けれど朝には、それがどんな内容で、何を話したのか、何一つ覚えていなかった。