夢をみた。
いつの頃か分からない夢だ、多分、今よりもっとずっと小さい子供だったように思う。
誰もいない部屋。
広い、広いリビングの、ソファの中央で、膝を抱えて小さくなっている。
庭に面したガラス戸から差し込む光は目を射すようなオレンジで、遠くから声と、音楽が聞える。
―――お腹空いたな。
もう少ししたらお手伝いの人が来て夕ご飯を作ってくれるはずだ。
今日の夜は何時くらいに電話がかかってくるんだろう。
(おとうさんと、おかあさん、どっちかな)
楽しみだな、早くかかってこないかな。
壁に貼り付けられたたくさんの絵葉書には見たことのない外国の風景が写されている。
カレンダーの数字に記された幾つものマルと、その上から書き込まれたバツ印。
(こんどはちゃんと、やくそくまもってくれるかなあ)
大丈夫。
毎日『愛してるよ』って言ってくれるから、きっと大丈夫。
(平気だよ)
なんだってひとりで出来るよ?
お手伝いの人が帰ったら、お風呂に入って、宿題して、今日あったことのメールを送って、それから夜更かししないで寝るんだ。
僕はちゃんと元気で、心配をかけない、偉い子なんだから。
(寂しい)
―――誰も、誰も、いないんだ。
(一人で平気)
寂しいなんて言わない、そんな気持ちは必要ない。
今度の約束も守られることはない、その次も、その次の次も、ずっと。
(だったらもう、いい)
守られない約束なんて要らない、裏切るだけの温もりなら信じない。
泣いたって叫んだって叶わない願いなら―――
(俺は独りでいい)
目が覚めた。
くだらない夢を見たと、朋也は額を押さえながら、軽くため息を漏らしていた。