「ようすけ?」
赤い風景に漏れた、微かな呟き。
いや―――呼びかけた朋也自身、直後に理解していた。
これは、花村陽介ではない。
形を似せてあるだけで、本質は―――恐らく、先ほどの蔦と同じ何かだろう。
女はフッと手を振り、現れた扇を優雅に揺らす。
『ウフフ、そうよ、アナタの愛しい、花村陽介、アナタが愛して止まない、たったひとりの運命のヒト』
もう一人陽介が現れた。
更に一人、また一人。
『いいわね、これだけいれば、もう寂しくなんて、ないでしょう?』
複数の同じ顔が佇む様子というのは、それだけで充分気味が悪い。
しかも、目の前の陽介たちは、全員瞳に精気が感じられず、胡乱で、どこか屍めいてすらいる。
無表情で朋也を取り囲み、あられもない姿を見下ろす、その股間の男根だけが赤黒くそそり立っていて、朋也は思わず身じろぎをした。
「なんだ、こいつら」
『今、ようすけって、呼んだじゃない』
「違う、これは、陽介じゃない」
『どうして?同じでしょう、数が多いのは、アナタが沢山愛を願ったからよ?』
「そういう意味じゃない、こんなもの、陽介じゃない、これは誰だ、一体何だ」
『ウフフ』
女がフワリと袂を翻す。
すると、陽介たちが一斉に手を伸ばしてきた。
「やめろ!」
抗う朋也の腕を掴み、足を広げて、その内の一人が唇を重ね合わせてくる。
歯を割って這いこむ舌の感触に、朋也はギュッと目を瞑った。
(違う、こんなの違う)
喉に、脇に、口付けされる。
乳房を吸い上げられて、ビクリと震えた腰を、手が押さえつける。
ピチャピチャと舌を絡ませるキスから解放されて、互いの舌の間を伝う銀糸を拭いもせず、同じ唇が耳朶をネロリと舐る間、もう一人の陽介から新たに唇をねだられて、抗いきれず、また奪われる。
そうしている間に掌に熱を覚えて、上から重ねられた指の促すままに、熱い感触を抜かされる。
脇の下で擦れる何かがあった。
グチュグチュと音を立てて、繰り返し抜き差ししている。
漸く唇を開放された朋也の視界に映ったのは、豊満な乳房に挟まれた赤黒い男根だった。
滑る表面をてらてらと光らせて、今にも噴火しそうなほど硬く屹立している。
その乳房の先端に押し付けられた祈祷が乳首をクリクリと擦り、片方の乳房は陽介の手に揉みしだかれている。
「あっ、ううっ、やっ、やめ、ろっ」
呻く朋也の首筋をねろりと舌が這う。
へその窪みをペロペロ舐められている感触と、明るい茶色の髪が眼下に揺れている。
そうして、内腿に繰り返しキスをして、一人がふくらはぎに舌を這わせ、もう一人が蔦に犯され滑り解れた密壷にジュッと吸い付いた。
「ひあ!」
ビクリと震えた朋也の唇が、再び、陽介によって塞がれる。
口腔内を思う様舐られながら、蜜をズルズルと吸い上げ、膣内に潜り込んでくる舌の感触を覚える。
朋也の舌と、舌を絡めあい、いやらしいキスの合間に、胸の谷間でブルリと棹が震え熱い体液が吐き出された。
喉から顎にかけて滑り落ちる感触に次いで、手の中でも雄が弾けて、朋也の髪に青臭い汁の迸りをぶちまける。
膝裏をネロリと舐られ、菊座に指が入れられた。
「んむう!んん!んー!」
陽介のキスはまだ続いている。
流れ込む唾液の嚥下が追いつかず、合わせた唇の間から滴り落ちるに任せて、その間も蜜を吸い上げ、舌で襞の奥を嬲られて、指先が腸壁を刺激する。
乳房を強く吸われた痛みでビクリと体が跳ねた。
もう片方の乳房も、別の陽介がチュバチュバと音を立てて吸っている。
口腔内で舌先が乳首をネロネロと舐り、転がし、グニグニと押し潰す。
折り重なる幾つもの荒い吐息に、朋也は半ば気が狂いそうになっていた。
腕を伸ばして宙を掻いた、その手を掴まれ、指の股を舌が這い、一本ずつ指をしゃぶられる。
「んあっ、ひっ、いやあ、あ、いやっ、んむ!」
口付けの合間に自由になった唇から漏れる言葉は意味を成さず、陽介の指が、朋也の蜜を掻きだす様に花弁の奥へジュポジュポと出入りし始めた。
「んん!ん!んんー!んー!」
イヤイヤをするように首を振ろうとした、その頭を押さえ込まれて、更に激しい口付けを強要される。
菊座から引き抜かれた指の代わりに、熱を帯びた先端を押し付けられて、朋也は必死の抵抗を試みた。
けれど、もとより弛緩した体は為す術も無く押さえ込まれ、慣らされた肉の輪を、蕩ける芯を穿つように、硬くそそり立った質量は容易に進入を果たしてしまう。
体内に雄の熱を覚えた朋也のまなじりを涙が伝い、唇が解けると同時に、今度はグチュグチュに熟れた泥濘を穿つように陽介が腰を突き込んで、細い喉が声にならない音を漏らした。
前と、後ろに、陽介のものが入っている。
いや―――コイツラは陽介じゃない。
見た目だけ同じ、偽者だ。
陽介たちは一言も発さず、ただ熱い吐息と共に、獣欲を朋也に押し付けてくる。
同じじゃないか。
再び零れ落ちる涙を、朋也は拭うことができない。
両腕を捕えられて、それぞれの手で、陽介たちの男根を抜かされる。
手の中の熱い逸物はビクリと震えて、生臭い体液を容赦なく朋也に吐きつける。
二つの孔を穿った雄達はそれぞれ思い思いに抽挿を繰り返していた。
喘ぐ朋也の唇が、今度は屹立した男根で塞がれる。
頭を押さえつけて、ぐぼぐぼと容赦なく突き込んでくる。
大勢の、恋人と同じ顔をした男達に責められて、中央で揺れている少女には、既に抗う手段など残されていない。
目に映る姿は全部陽介なのに、本物の陽介はどこにもいない―――
涙で熱を帯びた目裏に陽介の姿が浮かんでいた。
―――優しい声、愛しげな眼差し、ふやけた笑顔、そして―――あの時の言葉―――新たに浮かんだ涙が朋也の頬を伝い落ちていく。
(ダメ、だったのか?)
花の匂いがした。
(やっぱり、俺じゃ、お前の期待には応えられなかったのかな、陽介)
一際強く穿たれて、下腹に熱い気配が広がっていく。
(あんな言葉、聞きたくなかった、俺は、それでもお前が、俺を選んでくれたんだって、そう思いたかった)
喉の奥に流れ込んできた精は、今度も陽介と似た味がした。
口腔内からズルリと引き抜かれると同時に、唇を汚す獣液は喉まで伝い落ちていく。
(もう、寂しいのは、イヤだ)
充血してふっくらと腫れ上がり、ぐじゅぐじゅに蕩けた陰唇からズルリと抜かれた質量と入れ替わりで、新たな雄がぬかるむ洞を満たした。
(一人は、イヤだ)
繰り返し穿って肛肉の奥に吐精した雄が、別の雄と入れ替わり、再びぐぼぐぼと肉の輪を潜り始める。
(お前が、俺の相棒になってくれて、それだけで充分だって、満足しておけば、良かったのか―――)
目の前に見えた陽介の姿に、朋也は自分から唇をねだった。
紛い物でも、なんでもいい、冷たく体を侵食する闇から今すぐ抜け出したい。
自分の中に広がる虚を、自覚せずにいられなかった。
陽介に犯される。
大勢の陽介から、繰り返し何度も感情の伴わない性交渉を強要される。
それでも―――もう、いい。
女の笑い声が聞こえたような気がした。
股座を突き上げるようにバチュバチュと穿つ音が一際高くなり、奥まで入り込んだ陽介の雄が、容赦なく朋也の膣内に精を吐き出す。
腸腔内にもどろりと熱い汁が注ぎ込まれた。
乳房を揉む陽介の手。
絡みつく陽介の舌。
全身を余すとこ無く道具のように用いられて、また、新たな男根が、朋也の前と後ろに挿入される。
涙が零れた。
―――最初から女だったら良かったのに。
絶望感と共に朋也は最後にもう一度だけ視界に陽介の姿を捜し求めると、緩やかに意識を失った。
しかし、自失した後も、狂姦の嵐が止むことはない。
波間を漂う小船のように、玩ばれ、ユラユラと揺れ続ける少女の姿を、離れた場所に佇む仮面の女が無言で見詰めていた。