雨が降っている。
目が覚めて、どこか遠い気分で雨垂れの音を聴いていた。
―――今朝、こんなにも目覚めが悪いのは、全部あの無神経な馬鹿の所為だ。
仄かな頭痛を感じ、頭を抑えて目を閉じた。
再び開いて時計を見れば、時刻はそろそろ9時を過ぎる。
(叔父さんは仕事に行った後だろうな)
布団からむっくり体を起こし、上掛けのタオルケットを除けながら朋也は立ち上がった。
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今度は連載でエロス!
『A Midsummer Night's Dream』
漸く念願の…女体化祭りじゃあああ!(外道)
お付き合いいただける好きモノの皆様は、どうぞよしなに。
ちなみにニョタッてるのは黒沢番長だけですので悪しからず。
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霧の世界。
何もかも曖昧な、混沌で満たされた妄想の巣窟、思いが具現化する世界。
その一角に放り込まれた人間の思念が形を成し、危険な迷宮が出現して、これで四箇所目。
ボイドクエストの趣味の悪さに辟易しながら、先鋒を務める朋也は足を止めた。
「皆、ついてきてるか?」
振り返るとまず相棒と目が合った。
途端、陽介は仄かに視線を緩ませて、口元に淡い笑みを浮かべる。
「ついてきてるぜリーダー」
「クマもいるクマ!」
陽介の背後からひょこっと気ぐるみが顔を覗かせ
「全然問題ないッス先輩!」
しんがりから完二が手を振った。
朋也は頷き返すとそのまま各人の状態確認に入る。
「りせ、データを」
『ハイ先輩』
可愛らしい声と共に視界に数値化されたそれぞれの情報がPCのウィンドウ形式で表示された。
諜報能力に特化したりせが仲間になり、利便性の高い機能が幾つも追加されたお陰で霧に包まれたテレビの中も随分歩きやすくなったのだが、その分無理をしがちだ。
リーダーを任されている以上、探索中のペース配分や全員の体調管理は自身の仕事と朋也は心得ている。
陽介、クマ、完二とチェックを行い、最後に自分の項目を確認しようとした朋也は軽く首をひねっていた。
「どーした?」
肩に乗せられる重み。
身を寄せて、覗き込んでくる陽介を、それとなく避ける。
―――今日だけはこの懐っこさが鬱陶しい。
(知るか)
多分、どうしたんだろうときょとんとしているだろう相棒を放っておいて、朋也はもう一度自分の状態確認を行った。
体力、気力共に問題なし、バッドステータス付加などもない、けれど―――
(なんだ、これは)
目がおかしいのだろうか、項目が二重にぶれて見える。
各々数値の背後にぼんやりと違う数値が表示されているような気がする。
りせ、と呼びかけようと思った矢先、『先輩』と多少緊迫感のこもった声が脳裏に響いた。
『何かおかしな気配がする』
「え?」
『先輩たちのすぐ傍、危ないって感じじゃないんだけど』
「それは、どういう」
『近付いてくる―――何だろう、これ、知ってる雰囲気?一体―――』
要領を得ないりせに困惑しつつ様子を窺っていた朋也は、ハッと体を硬くした。
何故か判らないが、背筋を怖気が走り抜けていく―――
直後に「先輩!」と完二の逼迫した怒号が響き渡る。
全員が咄嗟に動けなかった。
朋也の背後でいきなり膨らんだ気配が、そのまま圧し掛かってくるのを感じた。
―――振り返った瞬間。
視界を覆う真っ黒な影、そして、痛みを伴う激しい衝撃。
すぐ傍で陽介の叫ぶ声を聞いたような気がする。
全てが未明のまま、まるで放り出されるかのように―――朋也の意識はゆっくりと闇の底へ落ちていった。