■2011年ヨースケお誕生日企画!
注意※
花村さんのお誕生日をお祝いするつもりで書いたなんて言いません。
皆さんもそういうつもりで読まないように、趣旨なんてもとよりあって無いようなもんさ、へヘッ
黒沢って趣味いいよなあとヘッドホンから聞こえてくる洋楽にしみじみ耳を傾ける。
今年の誕生日、もしかしたら貰えないかもしれないと思っていたプレゼントはちゃんと用意されていた。
忘れられていなくて、本当に良かったと思う。
同時に、無視されなくて良かったとも思う。
今年の四月に知り合って、まだたった三ヶ月の付き合い。
正直こんな短期間で関係を深めた相手なんて今までいなかったし、しかも、心を寄せ合った相手が男だなんて、あまりに初めてのことだらけで未だに朋也の考えを正確に読み取れたためしがない。
心優しい相棒は、けれど、時々酷く意地の悪い面も見せるから、あえてスルーされる可能性を拭いきれなかった。
(ちゃんと、俺のために、プレゼント用意していてくれた)
口で素っ気なくても、想いをちゃんと示してくれる、そんな朋也が大好きだ。
いつから好きになったのかなんて知らないし、そんなの今更どうだっていい。
そして今年だけは、どうしても朋也からのプレゼントが欲しかった。
真心の篭った、愛しい相手からの贈り物。
この広い世界で、二人が出会い、互いの倫理観を乗り越えて恋に落ちる確率なんて、高くないに違いない。
それなのに、俺たちは想いを通わせる事ができた。
奇跡が育まれた記念の年、自分という存在が世界に産声をあげて、お前に至るまでの一歩を踏み出した、だから今年の誕生日はどうしても、朋也の心が篭められた形のあるものが欲しかった。
(お前の誕生日には、絶対、気合入れて贈り物するからな、黒沢)
イヤホンから流れてくる音楽に耳を傾けつつ、うっとり想いを巡らせる。
一体何を贈ればいいかな、俺の気持ちをどうやったら伝えられるのかな、思い切って指輪を買ってしまおうか、でもまだそれは重過ぎるかな、最初の贈り物はネックレスぐらいに留めておくべきだろうか。
(いや、でもちょいゴツめのシルバーリングだったら勘繰られないでつけて貰えそうな気がすんだけど、って、それはちょっとアイツのイメージじゃないか、てかその前にまず指のサイズを聞かないと)
ふと足を止める。
仰げば空は既に夏色に染め上げられて、梅雨の晴れ間の綺麗な青が輝いていた。
(黒沢に、俺からの指輪、嵌めて欲しいなあ)
繊細な朋也の指には、きっと細くてプレーンなシルバーのリングがよく似合う。
こっそり、お揃いにしちゃったりして。
赤くなった陽介の肩を、背後から不意に誰かがポンと叩いた。
咄嗟に声をあげて挙動不審気味に振り返ったら、今、妄想の中に主演していた相手がきょとんとした目で陽介を眺めていた。
「何?」
首を傾げる朋也に、陽介はあたふたしながら何でもないと手足をバタつかせる。
「その、か、考え事!考え事してただけだから!」
ヘッドホンを下ろして苦笑いを返したら、呆れた様子で「そんなところでぼんやりしてると、通行の邪魔」と隣を通り過ぎていく。
「遅刻するよ」
「ちょ、ちょっと、待てって!」
慌てて追いかけて、朋也と並んで歩き出した。
横目でこっそり窺った姿は、朝の光を浴びて、いつもより数割増し綺麗だ。
涼しげな表情も、自信に満ちた眼差しも、それでいて、穏やかで知性を感じさせる雰囲気も、何もかもが魅力的で陽介の心はグイグイ惹き付けられてしまう。
傍を通り過ぎる生徒たちも、男女問わず、陽介と同じように、時折朋也にチラリと視線を向けていた。
彼らの瞳に過ぎるもの―――羨望、憧憬、美しいもの優れたものについ目が向いてしまう深層心理。
そんな朋也は俺の相棒なんだと、陽介は声に出して叫びたいような衝動に襲われる。
俺だけが、深い部分に触れる事を許された。
お前らが見た事の無い表情や、聞いた事のない言葉を知っている。
どうだ、いいだろう、羨ましいだろう。
(なんて、んなことしたら黒沢怒んだろうなあ)
ただ、それは、陽介の自惚れや独り善がりを否定されるわけじゃない。
朋也は陽介が幾らデレデレしたって、だらしなさを咎める事はあっても、想い自体は拒まない。
ただ、想いや欲求を素直に表現できない、することに抵抗のある彼は、むやみやたらと内面に踏み込まれたり、明かされる事を非常に厭っている。
だから、陽介を通じて、自分の心を暴露される行為そのものに、腹を立てて怒るだろう。
そんな胸の内も理解できるようになった。
あの日―――川原で殴りあって得たものは本当に大きいと思う。
(あの時、朋也が応えてくれて、本当に良かった)
おかげさまの今だ、出会ってからの諸々も含めて、朋也には幾ら感謝しても足りない。
「なあ」
「ん?」
赤面しそうな本音はとりあえず奥に引っ込めて、陽介は明るく朋也に話しかける。
「りせちーさ、助け出せて本当に良かったな」
「うん」
「まだ寝込んでるらしいけど、大丈夫かな?」
「これまでと一緒だろう、暫くすれば元気になるよ」
「って事は、もしかして俺らの仲間になっちゃったり?」
朋也が呆れ顔で溜め息を吐いた。
「やれやれ、それが本音か」
ケラケラ声を立てて笑いながら陽介も「なんだよー」と脇を小突いてやる。
「お前だって現役アイドルとお近づきになりたいだろ?」
「そういう、よこしまな事ばっかり考えてるから、花村はダメなんだ」
「酷ぇ言い方、ダメって何だよ、それに、そればっかじゃねえぞ」
「どうかな」
整った横顔にフッと笑みが浮かんだ。
「路上で妄想にふけるような、怪しい奴だしな」
「そ!それは、違うって!」
「なら、何考えてたんだよ」
「うっ」
―――まだ、それは、当日までのお楽しみ。
黙り込んだ陽介に「ほらな」と白い目を向ける朋也を、軽く睨みつけながら改めて口を尖らせる。
「違ぇーよ、別に、変な事考えてねえって!」
「もういいよ、花村がやらしいヤツだって事は知ってるから」
「ち、違うっつの、マジ違うから!」
「林間学校に女子の水着用意してくるような奴だもんな、仕方ないよな」
「あ、あ、アレは!」
最早ぐうの音もでなくて、今度こそ黙りこむ。
そんな陽介を眺めて、今度は朋也がケラケラと笑っていた。
朝の日差しが眩しい。
笑う朋也もなんだか眩しい。
思わず目を眇めて、見惚れる陽介の耳に、首にかけたヘッドホンから音楽が流れ込んできた。
(あっ、そういや、これ)
数日前の記憶が蘇る。
誕生日プレゼントのCDは、朋也が好きなアーティストのものらしい。
後で貸してくれと冗談めかして言われた。
その願いは、まだ朋也の中で健在なのだろうか。
(貸してやって、勿論構わないんだけど)
改めて言われたわけでもないし、気にし過ぎかもしれない。
どうしようかなと考える陽介の傍らで、朋也は別の話題を切り出している。
(また、後にすっか)
それとも―――
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