恋愛テーマでお題20セレクト/戻る   キャラクターカラー/ルカ コウ ニーナ タマ したらん
01.妬いてる? 02.イジワル 03.身長差 04.優しい温もり 05.手を繋いで
06.まるで初恋の様な 07.他の誰でもない 08.いつかの約束 09.大好き! 10.笑って
11.センチメンタル 12.可愛い 13.幼なじみVS 14.ジレンマVS 15.かなわない
16.恋愛対象 17.それは、恋の病 18.残り香 19.ヒロインの条件 20.「はい、あーんv」
 
06.まるで初恋の様な
(琉夏×主人公)

■お題選択
廊下を見渡して、目当ての後姿を見つけた。
上履きのかかとを踏んで、シャツの裾をヒラヒラさせて、遠くにいても目立つ金色の髪。

「ルカ!」

呼ぶと、立ち止まった背中がクルッと振り返る。
私と目が合う前からニコニコ、何かいいことあったのかな?
急ぎ足で傍まで来て、なあに?って訊いてきた。

「今日のお昼はどうするの?」
「なんもないけど、もしかして、ゴチソウしてくれるの?」

ご馳走って程じゃないけど。
私はちょっと苦笑い。

「私の作ったお弁当だから、大した事ないよ」
「えっ、お前の手作り弁当?」
「良かったら一緒に食べないかなと思って、ルカ、お昼の度に皆におかずのおねだりして回ってるんだもん」
「いやあ、それは」

今度は琉夏が苦笑い。
改めて、お弁当の事「マジ?」って聞き返されて、「マジだよ」って答えた。
早起きして頑張ったんだ、でも、中身は殆ど冷凍食品だけど。
(一応、玉子焼きは作ったし、ご飯は炊いたよ)
―――炊飯器調理は手作りって言っちゃダメ?

(でも、メインはそこじゃないからいいの!)

嬉しそうな琉夏が「ヤッタ」って言う。
私も嬉しくなって、じゃあお昼にね、って約束して一旦別れたんだ。


―――そして、昼休み。


今日みたいに晴れた日は屋上に出ると凄く気分がいい。
どこまでも広がる青空の向こう、遠くに見えるはばたき山の上に、白い雲がモコモコ浮かんでいる。
柔らかい風が並んで座る私と琉夏の髪を揺らす。

「ねえルカ」
「ん?」
「お腹減ってたの?」

一人分のお弁当をペロリと平らげた琉夏は、ついでに私のおかずまで摘んで食べた。
満足そうな姿が、ちょっとだけ肩を竦める。

「うん、ペコペコ、お前の手作り弁当食えるって聞いて、4時間目は授業頭に入んなかった」
「ちゃんと朝ごはん食べてきたの?」
「一応、コーヒー一杯」
「それはご飯じゃありません、ダメだよ、朝は食べないと」
「はーい」

そういえば琉夏、前に『女の子のお弁当貰うのはちょっとね』とか言ってたよね?
一応私も女の子なんですけど。
(もしかして、女子にカウントされてないのかな)
それはちょっとショック。
気を取り直して、お弁当を入れてきた袋の、奥のほうに手を伸ばした。

「ん?」

実はこれこそ、本日のサプライズ!
食べてもらいたかったのは、お弁当じゃなくて、こっち。
袋を探る私に気付いた琉夏が「なになに?」って隣から覗き込んできた。

「何してんの?」
「あのね」

指先に触れた容器を取り出した。
半透明のケースの内側で、うっすら黄色が透けて見える。

「じゃーん!」

膝に乗せて、蓋を開くと、プルンと現れた黄色いゼリー

「レモンゼリーです!」
「うそ、マジ?」

ビックリする琉夏に私は大満足。
食べたらもっと驚いちゃうかも、なんてね。

「お前、こんなの作れちゃうの?」
「頑張っちゃいました」
「そっか―――ねえ、これ、食っていいの?」
「勿論」
「やった!」

髪の間から見える瞳がキラキラして、口元からよだれが垂れちゃいそう。
琉夏にどうぞってスプーンを手渡して、さあ、召し上がれ!
とにかく食べて、喜ぶのはそれから、それから。

スプーンでひとさじ掬ってパクン、コクンと喉が動いて、琉夏は―――「うまい!」

嬉しそうな顔を見ていると、私まで幸せになってきちゃう。
気に入ってもらえたみたいで、琉夏はゼリーをパクパク食べる。
何だか頬が赤い。
そんなに喜んでもらえたのかな?
だとしたら―――凄く嬉しい。
お日様の光を反射する黄色のゼリーは宝石みたいにキラキラ輝いて、私もひとさじ味見をすると、思った通りの味がした。
練習したかいあったな。
琉夏に食べてもらいたくて頑張ったんだもん。
(でも、こんなに喜んでもらえたら、何も言う事ないよ)
また作ってこよう。
琉夏、食べてくれるといいんだけど。
もうひとさじすくって食べると、レモンの爽やかな風味が口の中で広がる。

「うまいなあ」

琉夏がしみじみ呟いた。

「お前って、何でも出来ちゃうんだね、凄いよ、俺、こんなうまいゼリー食ったことない」
「褒めすぎだよ」
「ホントだって、甘酸っぱい、初恋の味だ」
「え?」
「もしくはキスの味」
「キス?」

そ。
振り返った琉夏はニッコリ笑う。

「俺もお前も、今、口の中レモン味だから、キスしたらレモン味になるよ」
「えぇ!」

きゅ、急に、何言うの!
バクバク踊りだす心臓と同時に固まっちゃう私。
琉夏は面白そうにこっちを見てる。
もう、またからかったんだ!
(ゼリー作ってきたのに!)
―――まあ、これは、私が作りたくて作ったんだけどね。
(ルカの意地悪!)

思わず俯いたら、火照った顔を下から覗き込まれた。

「してみる?レモン味のキス」
「しません!」
「そう?」
「もう、そんなこと言う人には、何にも作ってこないんだから」
「え?ウソ、待って、ゴメン、それだけは勘弁して」

私は顔を上げて、謝る声にそっぽ向きながら、スプーンでゼリーをひとさじすくいあげる。
口に入れると滑らかに蕩ける甘酸っぱいレモンの風味。
(今キスしたら、ホントにレモン味だ)
いけない、自分で墓穴掘っちゃった。
またドキドキ早くなる胸を誤魔化すみたいに、急いでレモンゼリーをもうひと口食べた。

「ねえ」

横から琉夏が体を寄せてくる。
「食べていい?」

ピッタリくっついた温もり。
(もう)

「―――いいよ」
「また作ってきてくれる?」
(仕方ないなぁ)

うんって答えたら、琉夏は嬉しそうに笑った。
次は何にしようかな、リクエスト受け付けちゃおうかな?
こんな笑顔が見られるなら、もっとたくさん、いろんなものを作ってきたくなっちゃうよ。
おいしそうにゼリーを食べる姿をちらりと見て、ひとさじのゼリーを舌の上に乗せると―――初恋みたいなトキメキが、胸の奥で弾けた。
10/09/27
ホットケーキじゃないのは、お弁当があるからなのと、夢パティの所為です。
 
07.他の誰でもない
(不二山×主人公)

■お題選択
一通り片付けが終わって、フウって息を吐く。
胴着の管理は基本各個人でってなってるんだけど、予備の分は時々虫干ししておかないと、知らない間にカビが生えたりするんだよね。

(後は箒がけしたら終わりかな?)

ふと気配を感じて、振り返ったら窓の外に人影が見えた。
目が合った途端逃げていく女の子。
最近増えたなあ、ああいうの。

(柔道部がメジャーになってきた証拠なのかな)

遠征したり、練習試合したり、デモンストレーションも続けてるから、最近部には新人が増えた。
嵐くんと二人きり、立ち上げた頃とは大違い。
その分張り合いが出るんだけど、大所帯になって、マネージャーの仕事もどんどん増量中。

(マネージャーも増員して欲しいなあ、なんて)

ここまで盛り上げてこれたのは、嵐くんの努力の賜物だよね。
皆もそんな彼の格好良い所に気付いて、こっそり練習を覗きに来るようになった。
いい兆候、だよね、うん。
ただ肝心の嵐くんが、そういうの全然興味ないみたいで、人気ばっかり上滑りして変な感じ。
カレンみたいに騒がれるようになったら、いよいよ面倒臭がりそうだ。

(ま、ある意味男の子らしいかな)

「―――おい」

用具入れから箒を取り出した私の背中に声がかかる。
振り返ると、着替えの終わった嵐くんが「これから掃除か」って近付いてきた。

「そうだよ、箒がけしたら終わり」
「じゃあ手伝う」
「平気だよ、すぐやっちゃうから」
「二人でやったほうが早いだろ」

他の部員は皆帰ったらしい。
てっきり嵐くんも帰ったと思っていたんだけど、顧問の大迫先生に用事でもあったのかな。

「あ、そうだ」
「何?」

ついでだから、申し送りを済ませておこう。
こういうお仕事は全面的にマネージャーの私が何とかこなしてる。
部員が全力で練習に打ち込める環境を作るのが私の役目。
ホント、我ながら良くやるなって思うよ。
やっぱりもう一人くらい人手が欲しいかも。
卒業した後の事もあるし、マネージャーにも後輩が必要だよね。

「他は?」
「今ので全部」
「そうか、分かった」
「嵐くんからは?」
「特に無い」
「了解」
「お前が全部やってくれるから」

そう言って笑う嵐くんに、私は箒を持った手を止めて「そうだよ」って溜息を吐いて見せた。

「部員も増えたし、マネージャーも増員かけない?」
「なんで?」
「後輩のため、私と嵐くんがいなくなったら、皆困るでしょ?」

そっか。
答えた嵐君は、何か考える様子で畳を箒で掃きながら―――でも、不意に手を止めて、いらないだろって私の方を振り返った。

「まだ」
「うん?」
「まだ、いらないだろ、そういうの、うちのマネージャーは、お前一人で充分だ」
「でも、私も最近仕事が増えたから、手伝ってくれる人が欲しいかなーなんて」
「まだやれるだろ、お前はお前で、新入り達の見本になれ」
「ええーっ」

黙々と畳を掃く背中。
もしや、これで話を終わりにするつもり?
(それって横暴!)
まあ、いつものことなんだけど。

「当てがあるならともかく」

あれ?―――もしかして、そういうことなのかな?
「大丈夫だよ」

嵐くんがチラッとこっちを見た。

「ファンの子達、きっと頑張ってくれるよ」
多分嵐くんは心配しているんだろう。
練習を覗きに来る子はたくさんいるけれど、マネージャーの立候補はまだない。
それは多分私がいるからで、部として正式に募集をかければ、大勢来てくれるんじゃないかな。
(ミーハー気分で来られちゃ堪らないとか、そう言う事だよね、きっと、嵐くん硬派だから)
でも私がやれたんだもん、問題ないよって、言おうとしたら。

「そういうのはいい」

嵐くんは箒をかける手を止めて、掃除用具入れに向かって歩き出した。
「あいつらにマネージャーの仕事は勤まんねえよ」

やけに頑なな態度。
私は嵐くんが埃を集めた辺りに箒を掃いて寄せた。

「そうかな?」
「そうだ」
「わかんないよ?」
「わかる」
「だって、私にもできたのに」
「お前は別だ、あいつらじゃ無理だ」
「どうして」
「―――俺が、無理なんだ」

―――ん?
(今の、どういう意味?)

ちりとりを持ってきた嵐くんが畳の上で構えたから、私は箒で掃きこんで、集めた埃を嵐くんはゴミ箱に捨てにいった。
その間に私も箒を片付けると、ゴミ箱を嵐くんから受け取ろうとする。

「いい、それよりお前、帰る支度して来い」
「え、でも」
「これは俺が捨てとくから、準備出来たら部室の傍で待ってろ、俺もすぐ戻る」
「でも」
「じゃあ、後でな」

そう言って、ゴミ箱を持ってさっさと部室を出ていっちゃった。
嵐くん、もしかして、一緒に帰ろうって事なのかな。
(もしかしなくてもそうだよね)
私は何となく手持ち無沙汰のまま、荷物を置きっ放しにしている教室に足を向ける。
さっきの嵐くんの言葉が頭の中に残って仕方ない。
俺が無理、って?
(何が無理?)
ファンの子にキャーキャー言われる事が?それとも、ファンがマネージャーになることが?

(よくわかんない)

とりあえず、一個だけハッキリしたのは、まだ当分私一人で柔道部の補佐を頑張らなきゃならないって事。
よーし、上等だ、やってやろうじゃないの。
(スパルタ気味の部長からのお達しだもんね、新入部員も頑張ってるし、私も頑張ろう!)
やれやれって疲れた肩を叩いて、見上げた空は端の方からオレンジ色に染まり始めていた。
10/09/28
嵐さんは刀語の七花みたいだと思うんですけどどうですか?私の中ではヤツのイメージ
 
08.いつかの約束
(琉夏×主人公)

■お題選択
―――もういいかい。

声がする。

―――もういいよ。

男の子の声だ。
呼んでる。
もう一人はすぐ隣。
クスクス笑う私に、ダメだよって、楽しそうに耳打ちしてくる。
草むらから飛び出して、辺りをキョロキョロ見回している、活発そうな男の子。
私たちは背の低い緑の陰、息を殺して潜んでいる。

ねえ。

そっと呼びかけられて、振り返るとヘーゼルナッツの色をした瞳がジッと私を見つめていた。
「このまま、遠くに逃げちゃおうか?」

風が頬に触れる髪を揺らす。
飛び立つ小鳥の羽音、私たちを捜している男の子。
波音のようにざわめく木立の音を聞きながら、私は悲しそうな瞳を真っ直ぐ見詰め返す。

どうしていつも泣き出しそうなの?
どうしていつも寂しげなの?
どうして―――


「ん―――」

目が覚めて、気配を感じて見上げると、すぐ傍に琉夏の顔があった。
まん丸に見開いた目をちょっと慌てた様子で逸らして、赤い顔して体を起こす。
私はまだ半分寝ぼけ眼で、ゆっくり起き上がってあくびをした。

「あれ?」

ここ、どこ?
私の部屋じゃない。
(えーっと、ここは)
少し殺風景だけど、見覚えのある個性的な部屋。
考えているうちに、段々意識がハッキリしてきた。

「あっ」

そうだ、私、今日は琉夏の部屋に遊びに来ていて―――

慌てて隣を振り返ると、琉夏は何だか固まってる。
どうして顔が赤いの?
(何があったんだろう)
とにかく、私は急いで「ルカゴメン!」って頭を下げた。

「え?」
「私、ウトウトしちゃって」
「あ、ああ」
「ゴメンね、寝ちゃうなんて」

しかもここ、琉夏のベッドの上だ。
(私ったらなんて事を!)
穴があったら今すぐ潜り込みたいよ!
遊びに来た部屋の持ち主のベッドで、事もあろうか寝るなんて。
(ああ、もう、最悪だ)
何も言い訳できないって覚悟して下げ続けていた私の頭の上から、不意にクスって笑い声が聞こえた。
サラリと髪を撫でる感触に、ちょっとギクリとしながら恐々顔を上げたら、琉夏は笑っていた。

「いいよ」

大きな掌が、イイ子イイ子するみたいに私の頭を何度も撫でる。

「疲れてたんだな、仕方ない、よく眠れた?」
「え?あ、うん」
(って、違うでしょ!)

またクスクス笑われた。

「そっか、俺も、お前の可愛い寝顔見られてラッキーだった」
「え!み、見てたの?」
「うん」
「やだもう、やめてよ」

それは恥ずかしい―――と、いうか、じゃあさっきは寝顔を見てたのか。
急に火照った頬を両手で包むようにして、ねえルカ、って私は口を尖らせる。

「あのね、夢を見たよ」
「夢?」
「ルカと、コウくんと、私でかくれんぼしてたときの夢」
「へえ」
「ルカのベッドで寝たからかな、ルカ、昔は意地悪じゃなかった気がする」
「今も意地悪じゃないでしょ?」
「今はちょっと意地悪だよ、もう」

ハハハッて笑った琉夏を見て溜息。
記憶の琉夏はもっと素直だった気がするのに、やっぱりグレてた所為なんだろうか。
またあくびが浮かんだ口元を隠したら、不意に琉夏が「ねえ」って体を寄せてきた。

「夢でさ、花が咲いてなかった?」

花?
―――思い出せない。

考え込んだ私の背中をポンと叩いて、振り返ると「なんでもないよ」って笑顔。
けれどやけに寂しそうで、ベッドから立ち上がった琉夏を目で追いかけながら、思い出さなきゃいけない事があるような気がしていた。
遠い昔、一度だけ訊いた、他愛ない、けれどとても大切な話。

振り返った琉夏からホットケーキ焼いてよって言われて、私は気持ちを切り替えてベッドから立ち上がる。
琉夏のベッドはギシギシうるさいけど、琉夏の匂いがして、何だか凄く安心できた。
(だから寝ちゃったんだよね、ゴメン、ルカ)
私のベッドでも、あの頃の思い出を夢で見られるかな?
階段の手前で待っている優しい瞳に、寝覚めてスッキリした足を急がせた。
10/09/29
3は約束とかじゃなかったと改めて思い出した…アレは『信じる/信じない』だったよなあ。
 
09.大好き!
(琉夏×主人公)

■お題選択
指が絡んで、キュッと手を握られた。
琉夏の手は少しガサガサしてる。
花屋さんでバイトしているからかな。

「ねえ」

肩を摺り寄せるようにして、琉夏が話しかけてくる。

「さっきビックリした」
「え?」
「噴水の所で、ジュース買って戻ってきたとき」

そういえば―――って私は思い出す。
今日は少し暑くて、結構歩いたから「そろそろ疲れたんじゃない」って琉夏が気を遣ってくれて。
噴水のベンチで、琉夏がジュースを買ってきて、二人で並んで飲みながらいろんな話をした。

琉夏は時々黙ってじっと私を見るから、そういう時は私も何も言わないで、琉夏を見たり、風景を楽しんだりして過ごす。
暫くするとまた何か話して、黙って、話して。
二人で過ごすのんびりとした時間。
ゆったりした気分になる琉夏の隣。
手を繋いで歩いているだけで凄く幸せ。

「ベンチに腰掛けてるお前、妖精かと思った」
(え?)

―――えーっと、それって?
確かに今日はヒラッとしたスカート穿いてるし、気合入れて露出も多めにしてきちゃったけど。
(妖精?)

琉夏ってばニコニコしちゃって、もう。
喜んでもらえるのは嬉しいけど、でも妖精っていうのは何というか、その。

(若干、じゃなく、かなり恥ずかしい、かも)

思わずそっぽ向いたら、どうしたのって耳元で囁かれた。
やめてよもう、ドキドキしちゃって琉夏の事まともに見れなくなっちゃうよ!
返事の代わりに手をギュってしたら、お返しのギュ。
ついでにチュってされた、それは反則!

「コラ!」
「アハハ、ゴメン」
「もう」

私だって時々、琉夏のこと王子様みたいだなって思うよ。
口に出しては言えないけれど。
私よりずっと特別な雰囲気の琉夏は、家に帰るまでニコニコしながら手を繋いでいてくれた。
10/09/30
双方向大好き、妖精発言は(TVで)実際に聞いてドン引きしました、どんだけだ!(笑
 
10.笑って
(新名×主人公)

■お題選択
「ま、マジッすか?!」

口をあんぐり、目を大きく見開いた旬平くんに、店長はニコニコしながら「マジだよ」って。
傍で見ていた私もビックリ。
(うわぁ)
何て言えばいいのか、旬平くん、ご愁傷様。

えっと、今の状況を簡単に説明すると、本日新発売のお菓子を強化宣伝する店舗に私と旬平くんが一緒にアルバイトしているこのコンビニが選ばれて、店頭に台を作って、お菓子もダンボールに山ほど入荷して、後は当日、つまり今日、宣伝用にお菓子のパッケージキャラクターの気ぐるみを着た人と店員が宣伝販売する、っていうイベントをやる予定だったんだけど―――

着ぐるみを着る予定だった人がまさかの当日体調不良欠勤。
着ぐるみだけは先に到着していたから、事情を知ったお菓子メーカーから店長に直接電話がかかってきて、
『お店で何とかして下さい』って。
店長は、その時傍にいた旬平くんに、即座に白羽の矢を立てた。

「ま、待って下さい、マジで!勘弁して下さいよぉ!」

ジタバタしている旬平くん。
そうだよね、いくら中身は見えないからって。
(恥ずかしいよね)
万一知り合いにでもバレたら、ずっとからかわれそうだもん。
まあ、本音を言えばちょっとだけ―――面白いなとか思っちゃっているんだけど。
(いけない、いけない)
旬平くんにとっては一大事なんだから、意地悪なこと考えちゃダメだ。

「ああもう、何だかなあ、どうしてこうなっちゃうかなあ」

旬平くん、頭を抱え込んじゃった。
結局折れて、着ぐるみを着ることになって、イメージキャラクターはお花をつけたピンクのウサギ。
ハッキリ言ってかなりキュート
ウフフ、ダメダメ、笑っちゃいけないったら!

「あっれえ?」

宣伝販売用の台とお菓子を用意し終わって、いよいよ着ぐるみに着替えた旬平くんが戻ってきた。
メガホン片手に振り返って、咄嗟に笑いかけた私を見て、ピンクのウサギが首を傾げる。

「アンタ、今、俺の事見て笑ったっしょ?」
「そ、そんなことないよ!」
「ウッソ吐けぇ、絶対笑った、確実に笑った、チョー笑った!」
「こ、コラ、旬平くん!」

そんなにお喋りしたら中身がバレちゃうよって、そしたら旬平くん―――じゃない、ピンクのウサギは慌てて口元を押さえた。
台の反対側に小走りに移動すると、改めてこっちを振り返って、腰にキュッと両手をあてる。
(あれ?)
首なんか傾げちゃって、何だか様になってるかも?

「―――ちょっと!」

ポカンとしてたら旬平くんの声が聞こえた。

「呼び込み!アンタのお仕事!」

(はっ)
そうだ、いけない!

私は慌ててメガホンを口に当てて、新発売の何々でーすって声を張り上げる。
台の反対側では陽気にポーズを取っているピンクのウサギ。
やっぱりうまい、旬平くんってば!
(やる気になってる)
まさかの展開、店長もこうなるって見越して旬平くんを指名したのかな?
(結構可愛いかも)
旬平くんの意外な才能を見ちゃった気分。
(ふふっ)

ふと視線を感じて振り返ったら、ピンクのウサギがこっちを見ていた。
ちょっと首を傾げて、両手を前に出して、そのまま丸めた人差し指と伸ばした親指を合わせて胸のところに―――あれ、この形って?

首をキュッキュって左右に振るウサギくん。
仕草が可愛くて笑ったら、ウサギくんは急に両腕をパッと広げて、そのまま私に抱きついてきた。

「わあ!」

ギュってされた瞬間、フワフワの内側から伝わってくる硬くてしっかりした感触と体温。
私がビックリしている間に、離れて頭の後ろを掻くウサギくん。
いきなりだったけど、何か憎めないなあ。
(中の人が旬平くんだって忘れそう)
うん?
(じゃあ私、もしかして今って?)

ウサギくんが指を差すから、見ると結構な人数のお客さんが立ち止まってこっちを見ていた。
おっと、お仕事しなくっちゃ!
試食を勧めて回ったら、食べた人たちがお菓子を持ってお店の中へ―――これだけ大勢来てくれたらダンボールの山もあっという間に片付いちゃいそう、イベントは大成功だよ!
(凄い旬平くん!)
天性のエンターテイナーだね、さっきのアレも演出の一つだったのかな?

その日、店に貢献した私とウサギくんは、帰りに頑張って売り切ったお菓子をプレゼントされた。
明日と明後日もイベントをやるから一緒に頑張ろうね、ウサギくん。

家に帰ってお菓子を食べると、楽しい気分がウサギくんの姿と一緒に胸に浮かんでくるようだった。
10/09/30
いざとなったらニーナはやれる子、うさちゃんのハグは愛情120%です。


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